大相撲の元横綱日馬富士関(33)が11日、鳥取県警に書類送検された。秋巡業中の10月25日夜に鳥取市内で行われた酒席で、平幕貴ノ岩(27)を素手やカラオケのリモコンで殴った傷害容疑。起訴を求める「厳重注意処分」の意見を付けたとみられ、鳥取地検は年内にも略式起訴する方向で検討に入った。日本相撲協会は力士や親方ら全協会員を対象に、再発防止に向けた研修会を21日に東京・両国国技館で行うと発表。今後はこれまで協会の調査に非協力的だった、貴ノ岩の師匠の貴乃花親方(45=元横綱)の動向が注目される。

 元日馬富士関の書類送検判明から約2時間後、相撲協会危機管理委員会の鏡山部長(元関脇多賀竜)は貴乃花部屋前にいた。先週は3度出向き、この日は「貴乃花理事」と宛名を手書きした、これまでよりも大きな封筒を持参。チャイムを押すとインターホン越しに女性の部屋関係者から「ファクスでもよろしいのに」「次回からファクスをお使いくださいませ」と返答され、4度目も貴乃花親方への対面はかなわなかった。

 封筒には全容解明を目指す危機管理委による、貴ノ岩への事情聴取の協力を要請する文書などが入っていた。11月30日の理事会で貴乃花親方は、県警の捜査終了後は聴取に応じると約束していた。その確認もあって出向いたが空振りどころか、訪問から約2時間後、部屋から貴乃花親方が出てきた。“門前払い”された格好となってしまった。

 それでも協会トップの八角理事長(元横綱北勝海)は「粘り強くお願いしていくしかない。被害者側なのだから」と冷静に話した。同時に21日には「暴力問題の再発防止について」と題し、全協会員を集めて研修会を行うと発表。それに先立ち、20日には臨時理事会で危機管理委の最終報告を行う予定だったがこの日、八角理事長は「こればかりは分からないね。話を聞けないと」と、一方的に文書を送るばかりでトーンダウン。ずれ込む可能性を否定しなかった。

 捜査関係者によると元日馬富士関の暴行は、平手やカラオケのリモコンでの殴打と認定した。「ゴーン」という大きな音が鳴り、手から滑り落ちて床に転がったシャンパンボトルで殴ったと勘違いし、うわさが広まった可能性があるとした。地検は貴ノ岩の処罰感情や負傷程度、引退による社会的制裁などを考慮し、慎重に判断するもよう。ただ、正式な裁判を求める起訴ではなく、罰金を簡裁に求刑する流れになりそうだ。

 危機管理委はこの書類送検をもって「捜査終了」と認識。だが貴乃花親方は略式起訴などまでと考えている可能性もある。八角理事長は「協会員だから守らないといけない」と、貴ノ岩が聴取を受けやすい環境を整える構え。貴乃花親方がそれに応じるかどうかが、今後の動向のカギを握る。