大相撲の横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が、年6場所制となった1958年(昭33)以降の横綱では、貴乃花と並ぶ最長の7場所連続休場となる可能性が高まった。

 10日は朝稽古を休み、病院で左胸などの診察を受けたという。その後、師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)と話し合ったが、夏場所(13日初日、東京・両国国技館)出場可否の結論は出なかった。今日11日朝に決めるが、稀勢の里は次に出場する場所に進退を懸ける覚悟を示している。

 番付上位がこぞって精力的に稽古を重ねた前日9日からの2日間、稀勢の里は相撲を取らなかった。前日は四股など基礎運動主体。この日は稽古場に姿を見せず、病院に行った。ライバルとの差は開く一方。病院から戻った後、電話で夏場所出場の可否について約30分話したという田子ノ浦親方は「結論は出ませんでした。もちろん本人は出たい気持ちは強いと思いますが明日(11日)の朝もう一度話して決めます」と説明した。だが不調に加え、稽古の上積みもなく、出場は厳しい状況となった。

 先場所まで左大胸筋負傷などで6場所連続で休場した。初日からの休場には、その2日前の午前中開始の取組編成会議に届け出る必要がある。この日の早朝が決断までのタイムリミット。休場なら年6場所制以降の横綱では、貴乃花と並ぶ不名誉な最長の7場所連続休場となる。先場所までの6場所のうち4場所は途中休場だった。復調を予感して出場しても成績が伴わなかったが、今場所の仕上がりは前日も「どうだろう。まだ分からない」と、把握さえできていない状況だ。

 周囲も出場に否定的だ。3日の稽古総見は三役以上の申し合いで3勝5敗、4日は関脇栃ノ心に2勝9敗、8日は平幕琴奨菊に6勝10敗-。この日、田子ノ浦親方は「出ることになれば、横綱だから結果を出さないといけない」と話したが、今は稽古で勝ち越すことさえできていない。北の富士氏(元横綱)が「間に合わない」と言えば、舞の海氏も「厳しい。やめた方がいい」と、解説者から“休場勧告”が出た。芝田山親方(元横綱大乃国)は「原点にもう1回戻らないとダメ」と力不足を指摘した。

 稀勢の里は次に出場する場所に進退を懸ける覚悟を示している。師匠は「どんな場所でも覚悟を持って出ている。稽古を見れば厳しいところもある。迷っているようでは出られない。出るからには結果を残さないといけない」と語った。ギリギリまで決断できない現状は、精神的にも出場のタイミングではないと感じているようだ。自他ともに認める調整遅れの中、休場は避けられない。【高田文太】