不祥事が相次いだ大相撲で、新体制後初の本場所となる夏場所(東京・両国国技館)が13日に初日を迎える。3月26日の日本相撲協会理事会で、全会一致で3選が決まった八角理事長(54=元横綱北勝海)がインタビューに応じた。これまで語ることの少なかった思いを口にした。【取材・構成=高田文太】

 ◆貴乃花親方との確執

 昨年11月から半年間、土俵外の出来事が相撲界の話題の中心だった。その度に八角理事長と、貴乃花親方の対立が注目された。春場所初日2日前の3月9日には、貴乃花親方が内閣府に告発状を提出。対立の最終形ともいえる、当時の心境を振り返った。

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 八角理事長(以下八角) 何でって(思った)。その前に言ってくれればいいのに、と。理事会で顔を合わせているわけですから。しかも何で場所前に? びっくりしたというよりも、困惑ってやつです。

 春場所中の貴乃花親方の勤務態度も問題となった。無断欠勤、役員室滞在30秒足らずで帰る-。元横綱日馬富士関に暴行された、弟子の十両貴ノ岩から目が離せないことが理由だった。

 八角 そんな説明で通るかという話。(春場所中)最初に来た時にちゃんと言ったけど、意に介さずというか。いろいろと注意はしています。聞く耳を持つかは本人次第。ただ、指導もしていかなきゃいけない。

 告発状は春場所中に取り下げの手続きが取られた。きっかけは貴乃花親方の弟子の十両貴公俊が、付け人を支度部屋で数発殴る問題を起こしたことだった。

 春場所後の臨時年寄総会で、貴乃花親方は約100人の親方衆を前に、相撲協会に協力的ではない言動を責められた。同総会前には解雇相当の契約解除を求める声も、一部の親方から出ていた。それでも八角理事長は、個人的には契約解除は考えになかったという。

 八角 失敗はあるから、その後ちゃんとすればいいと思ってます。まじめに働いてくれれば。一緒にみんなでやっていかないといけないわけだから。1回の失敗で全部終わってしまうのではダメ。今後、理解してくれればと思っています。

 故北の湖前理事長時代には、ともに協会執行部にいた。腹を割って話した経験についても「ありますよ」と即答した。貴乃花親方から仕事面で、質問されることもあったという。

 八角 その時は「はい、はい」と納得して聞いてくれた(笑い)。だから話せば分かる。(元日馬富士関の暴行事件後は)何か、かたくなになっちゃって。

 一般的な企業とは違い、裸同士でぶつかり合い、同じ釜の飯も食べたことのある間柄だ。現役時代の対戦成績は1勝1敗。互いの良い面も悪い面も分かるからこそ見捨てられないし、分かり合えると信じている。

 八角 ちゃんとやってくれれば、いつか一緒にやれるわけですから。(貴乃花親方の)考えを支持してくれる人も出てくると思う。

 ◆八角信芳(はっかく・のぶよし)元横綱北勝海。本名・保志信芳。1963年(昭38)6月22日、北海道広尾町生まれ。79年春場所初土俵。立ち合いの当たりと突き、押しを武器に、87年夏場所後に第61代横綱に昇進。92年春場所限りで引退。通算591勝286敗109休。優勝8回、殊勲賞3回、敢闘賞3回、技能賞5回、金星1個。