19年ぶりに3横綱全員が不在という異常事態に陥った。3場所連続優勝を目指していた横綱鶴竜(32=井筒)が、名古屋場所6日目の13日、日本相撲協会に「右肘関節炎で13日より2週間の安静休務を要する見込み」との診断書を提出して休場。初日からの稀勢の里、4日目からの白鵬に続き、3横綱が全員不在。1999年春場所で曙、若乃花、貴乃花が相次いで休場して以来、昭和以降5度目の事態となった。

 ファンにとっては、さびしい場所となった。午前7時30分ごろ、愛知・東浦町の部屋宿舎を出発した鶴竜は、名古屋市の病院経由で帰京した。師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)は「靱帯(じんたい)とか筋肉の炎症。だいぶ状態が悪く、力が入らないということだった。場所前から悪かった」と取組ではなく、6月下旬の名古屋入り後の負傷と明かした。今後は都内の病院で再検査を予定している。

 今年に入って稀勢の里は4場所すべて、白鵬は3場所休場。鶴竜は皆勤してきたが、今場所は4、5日目と平幕に連敗。3連覇が遠のいたタイミングで決断した。井筒親方は「先場所は晴天だったのに今回は嵐になってしまった。天国から地獄。つらいですな」と、無念の思いを代弁した。

 突如、結びの一番となって臨んだ新大関栃ノ心は初黒星を喫した上に、休場危機に陥った。阿武松審判部長(元関脇益荒雄)は「(横綱が)いなくなって初めて分かる」と、横綱不在が影響した可能性を指摘した。

 ファンからは厳しい声も上がった。静岡・浜松市から訪れた鈴木智久さん(59)は冗談半分ながら「ちょっとお金を返してほしいよね」と漏らした。「お金を払う以上、厳しい目で見ていきたい」(20代女性)という意見も多数あった。八角理事長(元横綱北勝海)は「お客さんには申し訳ない」と話し、力士の奮闘に期待した。

 若貴、曙以来19年ぶりの3横綱不在。横綱の本場所不在も、1人横綱の朝青龍が3日目から休んだ2006年夏場所以来になる。複数の横綱が全員不在となるのは、朝青龍と武蔵丸がともに途中休場した03年名古屋場所以来15年ぶりだ。昨年からの不祥事に続いて「本丸」の土俵が充実しなければ、再び相撲界は不遇の時代を迎えかねない。