大相撲の貴乃花親方(46=元横綱)が、退職の意向を示してから2日が経過した27日も、各種手続きは進まなかった。代理人の弁護士が日本相撲協会に、すでに提出していた不備のある退職届を補足する上申書と、貴乃花部屋所属の力士ら10人の千賀ノ浦部屋への所属先変更願を再提出。芝田山広報部長(55=元横綱大乃国)は再び不備があるとして、貴乃花親方、千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)がそろって再々提出するよう促した。

もはや泥仕合の様相を呈してきた。この日は理事会や年寄総会など、協会執行部の親方衆は午前中から会議続き。そんな中、貴乃花親方の代理人弁護士が書類2通を手に国技館を訪れた。執行部からは直接受け取る時間がないと連絡を受けていたため双方とも顔を合わせないまま、受付の協会職員に書面を手渡して、滞在数分で窓口を後にした。

弁護士は2日前にも国技館を訪れたが「引退届」として提出した書面は「退職届」とあらためるように指摘された。所属先変更願は、受け入れる千賀ノ浦親方の署名、押印がなかった。そのため再提出を求められ、この日の所属先変更願には、千賀ノ浦親方の署名、押印はあったが、貴乃花親方の署名と押印をコピーした用紙の上からだった。芝田山親方は「(貴乃花親方の押印の)指の部分が真っ黒。あらためて原本を出してほしい」と再々提出を求めた。

弁護士は提出済みの「引退届」については「引退を退職と読み替えてほしいという上申書を出しました」と説明した。これについても同親方は「二重線を引っ張って退職届とするだけでもいいのに」と指摘。全てを読み込んでおらず預かり状態ではあるが、すんなりとは受け入れなかった。

結果的にこの日提出されたどちらの文書についても“物言い”がついた。何よりも「弟子のことが大事というなら、預ける側と引き受ける側、両方の師匠がそろって提出に来るべき。第三者がパッと来て、そのままスーッと行っちゃうなんてありえない」(同親方)と、貴乃花親方の姿勢に疑問符を付けた。

この日の理事会や年寄総会では旧貴乃花一門の阿武松親方(元関脇益荒雄)ら10人の他の一門への加入が議論される予定だった。だが芝田山部長は「(貴乃花親方の)弟子たちの所属先変更が決まらなければ、本人の退職も何も進まない」と、所属先変更が完了するまでは保留するとの見解を示した。10月1日の臨時理事会で貴乃花親方に関連する議題を話し合う予定だが、またまた書面などに不備があれば、移籍はさらに遅れる。残された弟子らだけが困惑する。