2人合わせて75歳の「熟年対決」で、再十両2場所目の西十両5枚目の豊ノ島(35=時津風)が、東十両3枚目の安美錦(40=伊勢ケ浜)を寄り切りで破り、4勝3敗と再び白星を先行させた。

これが通算42回目の対戦(幕内では40回で21勝19敗)で、21勝20敗と拮抗(きっこう)していた相手。平成の中盤に三役同士など幕内上位の土俵を彩ってきたカードの1つだ。対戦は平幕同士だった、15年秋場所(寄り切りで豊ノ島の勝ち)以来3年4カ月ぶり。手の内は熟知していたのか、立ち合いで安美錦が右へ変化したことも「頭の片隅に入れていた」。体を崩されることなく左を差しながら腰を密着。40歳の現役最年長関取が土俵づたいに右に回り込むのも「土俵の使い方がうまい。慌てずに(そこを)うまく対応できた」と話すように、腰を密着させながら右はおっつけで反撃のすきを与えず、寄り切りで快勝した。

ベテランの域に達したところでアキレス腱(けん)の大けがを負いながら、奮起の土俵を続ける両力士。3年前の7月に重傷を負い、幕下に陥落してすぐのころは、安美錦の存在を糧に、再起を目指していた。そんなことを口にした言葉を耳にした安美錦からは「おまえと一緒にするな」という「優しい言葉で突き放してくれた」。以後は自分は幕下、安美錦は5歳も年上ながら十両で踏ん張っていることもあり「置かれている立場も違う。安美関は安美関、自分は自分」と頭から離した。この日の対戦も「周りが意識させるから意識しちゃうけど、う~ん、まあ…」と特別な感慨は頭の片隅にはあっても、同じ本場所の一番と割り切って臨んだようだ。

ただ、番付では2枚の差はあるが同じ十両のステージに戻ってきた。その現実は「5年後の自分が、アレだけの相撲を取れるかを考えたら未知の所でやっている人」と今後の励みにもなる。「安美関も今の十両で満足しているわけがない。いい意味で何回も幕内で対戦できるようにしたい」。目指すは歴代最多カードの稀勢の里-琴奨菊戦の66回と大風呂敷を広げた後、しばし熟考。「まだ安美関とは(幕内で)40回か。ということはあと…5年? オレが40? 安美関は45?」と大笑いした。引き際に年齢制限はない。まだまだ相撲を楽しむつもりだ。