東十両11枚目の豊ノ島(36=時津風)が、大きな新年初白星を挙げた。連敗スタートで迎えた相手は、逆に連勝発進した再十両で勢いのある西12枚目の美ノ海(26=木瀬)。

踏み込んで狙った左差しは封じられ、距離を置いて右に回り込まれた。相手のいなしにも何とかついていったが、押し込まれ引いて相手を呼び込み、気がつけば西土俵に両足がかかるピンチ。だが、先場所後から10キロ減量し「横の動きは良くなった」と話していた通り、瞬間的に体を右に開きながら、前のめりな体勢で勝負を決めようとする相手をかわした。最後は体をのけ反らせながら、右足一本で踏ん張り、そんな体勢でも相手の左腕を手繰りながら、はたきこんだ。

十両も番付が2ケタの枚数になると、どうしても幕下陥落が頭をよぎってしまう。豊ノ島の場合はさらに、それが何を意味するか分かっている。「現役でやっている以上、終わることはあるし、覚悟の上でやっている」と引退の2文字と背中合わせの土俵だ。関取を維持し現役続行には今場所、6勝が求められる。そのためにも、反攻のきっかけとなる白星がほしかっただけに「とりあえず良かった」とホッとした表情で語ったのが第一声だった。「少し痩せたかいがあったかな。(横の動きも)俊敏だったかな」と少し照れくさそうに笑った。

連敗で憂鬱(ゆううつ)になりがちな中、前夜は高知の実家から父が「大丈夫か」と心配の電話を入れてきた。ラインで励ます声も多々ある。ただ本人は「意外と自分自身は先(引退)のことは覚悟できている」という。「それより、勝負だから勝ち負けはあるけど、自分らしい相撲を、見ている人がドキドキするような相撲を取らないとね」と思い直した。

気持ちの切り替えは験担ぎや何かに頼ったり、安易にリラックスすることはやめ「逆に気持ちを入れて『よしやるぞっ!』ってね」と、自分に活を入れて臨んだ土俵だった。昨年11月の九州場所千秋楽では「来年もここに家族を連れてくる」と誓った。十両残留での現役続行はもちろん、思う存分、相撲を楽しむつもりだ。