6場所連続休場明けの横綱白鵬(36=宮城野)が、大関照ノ富士との全勝相星決戦を小手投げで制し、復活の全勝優勝を果たした。進退を懸けて臨んだ今場所で、昨年春場所以来45度目の優勝。歴代最多を更新する16度目の全勝、横綱大鵬の5場所連続休場明け優勝を抜く最長ブランク優勝など、新たな記録を作って綱の威厳を示した。

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白鵬が復活した。3月の右膝手術を担当するなど、7年以上にわたって白鵬の主治医を務めてきた整形外科医の杉本和隆氏(52=苑田会人工関節センター病院長)。白鵬は杉本氏に昨年、進退についての思いを語ったという。

白鵬 僕は最初、モンゴルから日本に来て日本に帰化するまでの間、もしくは大関までは、負けて相撲を引退してしまったらモンゴルに強制送還なんです。ずっと16歳の時から進退を懸け続けているんです。

父ムンフバトさんは、レスリングのモンゴル代表として64年の東京五輪に出場し、68年メキシコ五輪では同国初の五輪メダルを獲得した。国民的英雄の父を持つだけに、16歳で角界入りした白鵬は何が何でも結果を出さないといけない、と自らに言い聞かせてきたという。杉本氏が「進退を懸けると言われても、それは今さらでしかない」と言うように、白鵬の胸の中には20年間「進退」の2文字があり続けた。

今場所前から復活を疑問視する声は、白鵬の耳には届かなかった。むしろ「名古屋場所で優勝したら九州まで行っちゃうね」と冗談めかして言っていたものの、視線は確実に先を見据えていたという。「本人は辞めるイメージ、負けるイメージがゼロなんです」と杉本氏。綱を外すつもりは、まだなさそうだ。【佐々木隆史】