とにかく強かった。今場所の玉鷲は、そのひと言に尽きます。優勝決定戦になれば高安にも初優勝のチャンスがあるかと思いましたが、本割の一発で決めたい玉鷲の攻めは完璧でした。

立ち合いは高安も悪くなかったけど、玉鷲は次の攻めが勝負、と思って休まなかった。右手で高安の脇を下から押し上げて相手の攻撃を防ぎながら、左右からの攻撃で押し込みました。土俵際でしぶとく残れるのが高安ですが、玉鷲は反撃されないように今後は直線的にノド輪押しで攻め込みました。左右から攻めて最後は真ん中。決してパワーだけではない、全ては理詰めの攻めが玉鷲の良さです。あの攻めをやられては高安もなすすべもありません。

その高安も精いっぱい戦った15日間だったでしょう。またしても、あと1歩で優勝を逃しましたが、年齢的なことを考えれば諦めたら終わりです。頑張れば、いつか賜杯を抱ける日が来ると思ってほしいです。

ベテランの2人が優勝争いを引っ張り土俵を盛り上げましたが、全体的に見ると今場所は淡泊な相撲が多かったような気がします。本場所は高いお金を払って足を運んでくれるファンがいます。ファンサービスなど協会も企業努力をしているようですが、やはり土俵の充実が一番です。お客さんを大切に「また見に来よう」と思ってもらえるような土俵に期待しています。(日刊スポーツ評論家)