日本相撲協会は10月31日、大相撲九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)の新番付を発表し、新小結の翔猿(30=追手風)が初の三役昇進に喜びをかみしめた。オンライン会見で「(番付のしこ名が)虫眼鏡で見ないとわからない時代からやってきました。大相撲に行くなら三役を目指してやりたいと思っていたので、すごくうれしかった。でも、もう喜びは終わりました。後は上を目指すだけ。まだ上があるので安心していられないです」と気を引き締めた。

初土俵から所要46場所。学生相撲出身としては2位のスロー昇進となった(1位は嘉風の61場所)ことに翔猿は「少しずつコツコツやってきたので、それが実った」と実感を込めた。埼玉栄の後輩で同じ追手風部屋にいる大栄翔には出世で先を越されたが、その悔しさをバネに自分を鼓舞した。同学年で早くから上位で相撲を取っていた御嶽海、北勝富士、宇良への対抗心を燃やし、基礎運動などの地道な稽古を続けた。

「せっかくのチャンスだから思い切ってやろう」と東前頭筆頭として臨んだ秋場所。しっかり勝ち越して三役をつかむべくまい進し、横綱照ノ富士を撃破し初金星。「自分の中でも自信になった」と快進撃を続け、同学年の当時大関御嶽海も破った。10勝を挙げて初の殊勲賞。「努力したことが無駄ではなかった」と実感できた。「周りの人に比べて遅かったですが、十両に上がったころから僕は30歳で(三役に)上がることを目標に立てていたんで。僕としては良い感じに来ている」と手ごたえは十分だ。

さらに押し相撲に磨きをかけるべく、「猿」から「ゴリラ」へとパワーアップを目指して奮闘している。気になるゴリラ化については「まだまだですけど、40%ぐらい」と道半ば。「まだ猿です。鍛えて体が大きくなるのがベスト。ただ食べて太るのではなく鍛えて太りたい」。約2週間後に迫った九州場所へ「ここからどれだけ追い込めるかが勝負。とりあえず勝ち越しを目指して、そこから」と1歩ずつ確かな足取りで地位を上げていく。【平山連】