東前頭筆頭の錦木(32=伊勢ノ海)が、自己最速となる9日目での勝ち越しを決めた。大関経験者の御嶽海に逆転の寄り切りで1敗を守り、関脇豊昇龍、平幕の北勝富士とともにトップを堅持した。上位力士の成績次第だが、初土俵から所要103場所と歴代3位のスロー新三役に大きく前進した。1差で関脇の若元春と大栄翔、平幕の遠藤の3人が追う展開となった。

押し込まれても慌てなかった。錦木は立ち合いで御嶽海にもろ差しを許したが、左上手を離さず食らいつく。土俵際に追い込まれても「残る体勢だった」と膝を曲げてじっくり耐えると一気に逆襲。寄って土俵を割らせ、自己最速となる9日目での勝ち越しを決めた。「勝ち越しって良いですねぇ~。チャンスをものにしました」とご満悦の笑みを浮かべた。

32歳のベテラン。自己最高位の東前頭筆頭で臨む今場所は、序盤戦から快進撃が続く。初日の大関霧島戦こそ不戦勝も、横綱照ノ富士を撃破し、豊昇龍、大栄翔、若元春と大関とりの3関脇を総なめ。上位陣との対戦は終えて優勝争いの先頭で並ぶも、「みんな紙一重ですよ」と油断はない。

兄弟子の春日山親方(元関脇勢)は下半身の力が十分に使えていることを好調の要因に挙げた。「今は膝が伸びないですよね。相手をしっかり受け止め、そこからまわしを取って、前に出られている」と指摘。現役時代は稽古仲間、引退後は親方として、ずっと一番近くで見守ってきた。「コツコツタイプ。急に変わったわけではない。今までやってきたことが実を結んでいるんじゃないでしょうか」と続けた。

8月25日には33歳を迎える。初土俵より所要103場所での新三役となれば、玉龍(同107場所)、琴稲妻(同106場所)に続く歴代3位のスロー記録となる。このまま順調に白星を重ねれば、伊勢ノ海部屋としては1967年名古屋場所を制した横綱柏戸以来、56年ぶりの優勝に期待がかかる。

同親方は「伊勢ノ海部屋に勢という名の力士はいなくなったけど、錦木の『勢』いで部屋が盛り上がれれば」。残り6日。白星を積み重ね、兄弟子の願いに応えたい。【平山連】

◆関連記事

【大相撲名古屋場所全取組結果】はこちら>>