9日目から休場していた大関経験者で西前頭7枚目の朝乃山(29=高砂)が、再出場の取組を制し、勝ち越しを決めた。幕内では初顔合わせも、十両土俵では2連勝、昨年春場所以来、5場所ぶりの対戦となった東前頭3枚目の豪ノ山を小手投げで破った。8勝2敗3休とし、残る2日間も勝って3連勝締めを目指すことになる。

今場所は初日から7連勝を飾り、単独トップに立っていた。だが8日目の玉鷲戦で、すくい投げで敗れた際に右足首を負傷。「右足関節捻挫で全治2週間を要する見込み」との診断書を提出し、9日目から4日間休場していた。この日の朝稽古後、朝乃山は「(玉鷲との)取組の後は、アドレナリンが出ていたこともあって痛みはなかった。翌朝、起きたら腫れていて、スリッパを履く動きをしただけで痛かった。とても四股を踏むどころじゃなくて、稽古場に降りることもできなかったので」と、休場を決断した経緯を説明した。

ただ、11日目から痛みや腫れが引き始め、前日12日目から稽古場に降りることができるようになった。その12日目朝の稽古後、師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)から「どうする?」とたずねられ「出たいです」と答え、出場を了承された。朝乃山は「勝ち越しがかかっているということがあったけど、やっぱり『出たい』という気持ちが強かった」と、再出場を決めた思いを語った。

新型コロナウイルスのガイドライン違反で、6場所の出場停止を経験した。大関から三段目まで番付を落とす間、部屋で稽古する毎日。体が万全でも出られず、本場所出場への意欲は人一倍強い。稽古場とは異なる緊張感で、相撲勘が磨かれることも再出場へと傾かせた。

出場を続けていれば、新入幕で9日目にして勝ち越しを決めた大の里との初顔合わせの可能性があった。大の里には年明け最初の出稽古で、初めて胸を合わせて1勝3敗と負け越していた。それだけに「やりたかったですけどね。仕方ないです」と、互いに優勝争いをしている状態での雪辱を目指していただけに、少し苦笑いを浮かべながら、悔しさをのぞかせた。

休場中はテレビ中継で幕内の取組を見ていた。上位陣が順当に星を伸ばす展開。優勝争いに割って入りたかった思いがあったかについては「そうですね。7連勝していたので。でも、仕方ないです」と答え、表情を曇らせた。返り入幕で12勝を挙げ、優勝争いした昨年5月の夏場所後、最近4場所連続、別々のケガに悩まされているだけに、浮上のきっかけをつかみたい様子だ。

これで勝ち越しを決め、残り2日間も勝って3連勝で締めれば、4場所ぶりに2桁白星となる可能性がある。「理想は2桁ですけど、その日の相撲に集中したい」。残り2日間は結果以上に、来場所につながる内容を求めていくつもりだ。