東京五輪を1年延期するのなら、マラソンと競歩は東京に戻すべきだ。IOCが勝手に札幌に移したが、小池百合子都知事は音なしの構え、猛烈に反対しなかった。

夏のカタール・ドーハでの世界陸上選手権のマラソンで棄権者が続出、IOCが東京の夏にびびってしまったのだ。マラソンと競歩は日本の有力種目、都知事が騒がなかったのは不自然に映った。小池都知事らしくない。

ドーハのマラソンコースは、浜風を受ける道路もあった。乾燥地帯にあっては、汗を流すと気化し、気化熱が奪われ体温が下がる。その連続、体がもつわけがない。1973年のレスリング世界選手権は、イランのテヘランで開催された。標高は1200メートル、それほど高くないが、大会は屋外のテント下で行われた。極め付きの乾燥地、バタバタと日本勢が敗退。

しかもテヘランの水は硬水、選手団は下痢に泣く。試合中にトイレに走るレスラーの多いこと。その地の風土を研究し、慣れるために早く現地入りする必要があったと反省。

1968年のメキシコ五輪、標高2200メートルの高地都市、日本選手団は高地トレーニングを重ねた。酸素が薄いゆえ、世界的に高地トレが流行。現在も高地トレが常識だ。大会開催地の環境や風土を研究し、練習に時間をかける。

日本の夏は高温多湿、相当な発汗量だが、各国選手団は研究を重ね対応すべく努力していたに違いない。が、突然、マラソンと競歩は札幌へとすんなり移された。クライマックスの舞台を、一銭も出していない札幌へ。

小池都知事は、20年7月が改選。組織委員会の森喜朗会長との対決を避けたようだ。自民党の選挙対策委員長は、旧森派の下村博文元文科相、もめずに静かにしていた方が得策、五輪よりも選挙を優先したと私は読む。

私は小池都知事と政治活動を共にした仲間。アイデアマンだしケンカ上手、何よりも時代を洞察する能力はピカイチ。コロナ禍の対応、世論は五輪よりも普通の日常の日々を求めている。