戦後3年の1948年、厚生省が行った調査では、孤児の総数が12万人を越えたという。最近では、NHKテレビ小説「虎に翼」(24年)で、その生活ぶりの一端が垣間見えた。
「わたしの知らない子どもたち」(10月16日公開)は、彼らがいかにして戦災孤児となり、戦中戦後を生き抜いたかを1人の少女とその教師だった女性の視点から描いている。
音楽家の優しい父の元で屈託なく育った12歳の琴子は戦争ですべてを失い、荒廃した東京に1人取り残される。「女」であることが搾取の対象になることを知ると、幼心に「男」として生きていくことを決意する。やがて、同じ境遇の少年たちと知り合い、がさつだが心優しい彼らと互いに支え合う仲間となる。
琴子の元担任だった文美子は戦争で婚約者を失い、忘れ形見の乳児を抱えて途方に暮れている。一方で、心の底には教え子を見捨ててしまった罪悪感があり、やがて琴子の捜索に乗り出すが…。
琴子役はオーディションで選ばれた小八重葵美(13)。悲惨すぎる状況にも、輝きを失わないまっすぐな目に、見ているこちらが救われる気がする。ラストシーンで見せる期待と不安の表情があまりに見事で思わず見ほれてしまった。今後が楽しみな逸材だ。
初潮を迎えた困惑や、どこか察しながらさりげなく彼女をかばう仲間の少年の心情を、「ゆれる」の西川美和監督が優しく捉えていく。そんな彼らの日常から、戦争の残酷さがじわじわ伝わる。
元担任の文美子には二階堂ふみ。どん底から生気を取り戻す過程で、戦後の女性の心情を代弁する。まるで同志として監督の思いを体現しているように見える。
孤児たちに仕事を手伝わせながら面倒もみるヤクザに岡田准一。憎めないワル感を漂わせている。
正義感はあるが、どこか心もとない新聞記者に坂東龍汰。救いの手を差し伸べる漁師夫妻に役所広司と田中裕子。この2人が登場すると、不思議と劇中に安心感が漂う。琴子の父役の竹野内豊のほっこり感といい。キャスティングの妙がある。
戦争の一番醜いところを描きながら、不思議と心が温かくなる作品だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




