旧日本軍のスパイとして活動したとされる清朝の王女川島芳子が、10代を過ごした長野県松本市などで撮られたとみられる写真が2枚、見つかった。「男装の麗人」とも呼ばれた川島の断髪前の姿に、所有者は「激動の人生が始まる前の表情をとらえた貴重な写真だ」と話す。

川島は1907年に清朝粛親王の王女として生まれ、日本人、川島浪速の養女となった後、松本市の旧制松本高等女学校に一時通った。2枚はいずれも、松本市文書館の木曽寿紀専門員(31)がインターネットオークションで入手したもので、退学して養父の秘書になった頃のものとみられる。

このうち、傘を差して別の女性と写ったものは、当時の新聞記者が所有していたアルバムにあり、台紙には24年に松本市の山荘で撮影したと記されている。

もう1枚の和装姿の写真裏面には「大正15年春川島芳子姫断髪前」との記載があるが、実際に断髪したのは大正14(1925)年とされるため、書き間違いの可能性がある。

断髪の理由は実父の死のほか、養父から暴行を受けたことなど諸説ある。川島は後に清朝再建を目指し、陸軍特務機関で情報活動に従事。48年に中国で処刑されたとされる。

木曽さんは写真について「内心でいろいろなものが揺れ動く時期。凜(りん)としたまなざしの中に、そんな感情も見て取れる」と話す。今後、松本市の施設に提供する予定だ。(共同)