自動車保険の保険金不正請求問題を起こした中古車販売大手ビッグモーター(BM、東京)の主要事業を承継した新会社が1日発足した。実質的な大株主の伊藤忠商事が同日、新会社の社名を「WECARS(ウィーカーズ)」と発表した。伊藤忠が主導して法令を順守する企業に再生できるかどうかが鍵となる。

金融庁が密接な関係だった損害保険ジャパンに業務改善命令を出し、店舗周辺の街路樹を伐採するなどの事件にも発展したBMの問題は大きな節目を迎えた。

新会社は約250店舗を展開する。看板は順次ウィーカーズにかけ替える。従業員は約4200人と、不正発覚時と比べ約千人減った。車の整備事業も引き継いだ。

法令を軽視するようなBMの企業体質をつくった創業者の兼重宏行氏と長男宏一氏ら旧経営陣は関与しない。伊藤忠出身でウィーカーズの社長に就いた田中慎二郎氏は東京都内で記者会見し「われわれが率先して徹底的に誠実であり、事業の透明性を追求することが必要だ」と述べた。

主要な事業を切り離した後の旧会社は社名をBALM(バーム)に変えて存続する。BMの社長だった和泉伸二氏がトップにとどまり、不正請求問題の訴訟対応などに当たる。伊藤忠関係者によると、創業家はBM株式をBALM側に譲渡し完全に手を引いた。創業家は対価を得るが、賠償費用などに充てることを了承している。

伊藤忠はレンタカーサービスを手がける東京センチュリーの筆頭株主で、傘下に高級輸入車販売のヤナセも持つ。BMが金融庁から代理店登録を取り消された保険業務についても、来店型保険ショップを運営する子会社の、ほけんの窓口グループと連携させることで補完する方針だ。(共同)