熊本地震では、2023年12月に73歳で死去した熊本県八代市出身の歌手八代亜紀さんがデビュー前に歌声を披露したキャバレー「ニュー白馬」(同市)も被災し、休業を余儀なくされた。「引き際かもしれない」とも考えた池田義信社長(77)の背中を押したのは「明るい話題がほしい」との常連客の願い。8月中旬に営業再開し、八代の夜をピンク色のネオンが照らした。
床一面に敷かれたレッドカーペットに、店内を照らすシャンデリアとミラーボール-。生バンドを擁する国内最後のキャバレーとされ、昭和の香りが人気の店は1958年に生まれた。
同市で震度6強を観測した地震後、池田社長が店に駆けつけると、バンド用の楽器がひっくり返っていた。バーカウンターでは酒瓶が床に落ちて割れ、アルコールのにおいが充満。スタッフと片付けを進めた。
断水や停電…。猛暑の中、住民が苦労しながら生活を取り戻そうとする姿も目の当たりにしてきた。「こんなときに飲み屋を開けていいものか」との葛藤もあった。
再開を後押ししたのは常連客の言葉。「八代にも明るい話題がほしい。早くネオンばつけろ」。電話やメールで全国から約100件の応援メッセージも届いた。「地域が一歩前に進んだと伝えたかった」と池田社長。8月20日夜、傷ついた街に再びネオンがともった。
八代亜紀さんは2015年に発売した曲「Sweet Home Kumamoto」で「白馬は聖地さ」と歌った。池田社長は「(もし八代さんが存命だったら)手弁当で避難所を回っていたと思う。よく頑張って再開したね、と褒めてくれるかな」と目を細めた。(共同)

