公認を決めた41候補のうち16人が離党するという前代未聞の事態となった民進党のドタバタを象徴する選挙区が江東区だ。告示前、最後の離党者となったのが民進党都議団代表も務めたことがある柿沢幸絵氏(47)。夫は蓮舫代表に役員室長に登用された柿沢未途氏(46)だ。蓮舫氏が江東区に入り、応援した12日後の今月6日に離党。都民ファーストの会の推薦を受けた。「反党的行為」として除名処分相当になり、未途氏は役員室長を辞任した。

 野田佳彦幹事長からは「柿沢議員は民進党の看板を背負って総支部長として活動しているわけですから、奥さんの応援で街頭でマイクを握るとか、集会で一緒にしゃべるとか、あり得ない」とクギを刺され、未途氏は表立って幸絵氏を応援できなくなった。都民ファの公認候補がいるため、小池百合子氏の応援も予定されていない。故柿沢弘治氏から続く江東区での柿沢ブランドと都民ファ推薦という風に頼る選挙戦だ。

 伊藤嘉浩事務局長は「順風か逆風かといえば、圧倒的に順風です」と強調するが、「節操がない」と眉をひそめる区民は少なくない。もともと練馬区選出で2期務めた後、結婚を機に江東区に鞍替え。結婚後も本名の「野上」を通してきたが、今月1日、柿沢に変更した。名字と政党を変えての勝負だ。

 離党を受け、民進党は大沢昇氏(52)を追加公認した。未途氏は依然、民進党の総支部長だが、大沢氏の事務所は「何の連絡もありません」。29日、前原誠司元国交相と杉尾秀哉氏が応援に入ったが、未途氏は姿を見せなかった。前原氏は都民ファ躍進という調査が出ていることに触れ「勝てると思って、うちの党を飛び出していった人もいる。そんな人が信用できますか」と切って捨てた。民主党→みんなの党→結いの党→維新の党→民進党と旗印を変えてきた夫妻の歩みを問う選挙になっている。【中嶋文明】

 ◆江東区 江戸初期はほとんど湿地帯だったが中期には利根川水系の船運の終着地として発展。1947年(昭22)に深川区と城東区が合併し誕生。豊洲地区は、1923年(大12)の関東大震災のがれき処理による埋め立て地。37年に豊かな土地になるようと命名。人口約50万6000人。