財務省は23日、学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる学園側との交渉記録や、改ざん前の決裁文書を国会に提出した。佐川宣寿前国税庁長官が「廃棄された」とした文書が、白日の下にさらされた。文書には、安倍晋三首相の昭恵夫人を指す記載が3年の記録の中に10カ所以上も登場。首相を夫に持つ昭恵氏への「忖度(そんたく)」が、随所ににじんだ。安倍政権に痛手となった文書公表。今日24日には、与野党激突の新潟県知事選が告示されるが、結果次第で首相はさらに追い込まれそうだ。

 「ない」とされた文書が、「あった」となる。さまざまな省庁で発覚する「ちゃぶ台返し」が、財務省でも展開された。財務省が提出した交渉記録は960ページに及び、職員の手控えとして残されていたもの。昨年2月の問題発覚以降、佐川氏は国会で「廃棄した」と繰り返し答弁しており、この国会答弁に合わせ、保管されていた交渉記録の廃棄が指示されていたという。

 佐川氏は、夫人付だった谷査恵子氏の財務省への照会について「制度に関する一般的な質問」と答弁していたが、交渉記録で判明した双方のやりとりは具体的で生々しく、夫人の介在をにじませる内容だった。

 谷氏と財務省のやりとりは15年11月10日と12日の2回。10日、谷氏は「安倍総理夫人の知り合いの方から(借地料を減額する)優遇を受けられないかと総理夫人に照会があり、当方からお問い合わせさせていただいた」と電話。国有財産業務課の職員が「折り返し連絡させていただく」と答え、田村嘉啓国有財産審理室長が谷氏に電話を入れた。

 12日には谷氏が「森友学園の件は、財務省がよく対応してくれているものと理解している」と発言。田村氏は「現行ルールの中で最大限の配慮をして対応している」と回答。財務省が夫人と学園の「蜜月」を気にしていた様子がにじんだ。

 夫人は15年9月に名誉校長に一時就任。交渉記録には事案の背景として「安倍総理夫人が名誉顧問に就任した開校予定の小学校から問い合わせがあった」と記されていた。一方、14年8月には、籠池泰典被告の妻諄子被告が「小学校建設は安倍首相、首相夫人、自民党幹部も認識している。(何かあれば、いつでも相談できる)」と述べていた。

 首相はこれまで「私も妻も一切関与していない」とし、「(照会は)谷さんが自発的にやった」と述べてきたが、表面化したやりとりの数々は「昭恵夫人案件」が前提のもの。首相は24日から27日までロシアを訪問し、翌28日、衆参予算委員会で集中審議を控える。自身だけでなく、麻生太郎財務相の責任問題も再燃。厳しい局面が続く。