自民党総裁選に出馬が取りざたされていた岸田文雄政調会長(60)は24日、都内で会見し、総裁選には出馬せず、安倍晋三首相(党総裁)の3選を支持する意向を明らかにした。

 自身の地元広島でも甚大な被害が出た西日本豪雨や、北朝鮮問題などの外交、来年、天皇退位と新天皇の即位など諸行事が控えることを挙げ、「安倍首相を中心に取り組むことが、日本にも重要と判断した」と、不出馬の理由を述べた。23日に首相と極秘に面会。決断は「今日の朝」とし、会見前、首相に電話で3選支持と自身の不出馬を伝えた。首相の憲法改正を支持するのかとの問いには、「これまで話してきている」として明確に答えなかった。

 岸田氏は、岸田派48人が結束して首相を支持する意向を表明。「派内にしっかり説明し、理解いただくことが大事」と述べたが、若手を中心に「出るべきだ」との主戦論も根強かった。ポスト安倍の有力候補といわれながら、戦わずして「安倍1強」の軍門に下る形になった岸田氏に、身内で不満が出る可能性もある。

 一方、党内には「無理に出ても勝ち目はない。敵前逃亡は冷静な判断」(関係者)の分析も。知名度は他候補より低く、岸田氏も「さまざまな情報に接し、考えることはあった」と認めた。また岸田派が流れをくむ名門派閥・宏池会は、99年総裁選で首相候補といわれた加藤紘一氏が現職の小渕恵三首相に挑んで、惨敗。その後、派閥がポスト面で冷遇された悪夢も、現職総理との対決回避に影響したようだ。今後の人事について、岸田氏は首相との密約は「ない」と訴えた。

 周辺では「禅譲」「次の次」の期待もあるが、岸田氏が戦うチャンスを自ら手放し、一気に盛り下がった総裁選。現状では、前回12年総裁選で決選投票を争った首相と石破茂元幹事長による、「AIガチンコ対決」が濃厚だ。