史上最年少プロ棋士、藤井聡太七段(16)が3日、大阪市の関西将棋会館で指された第44期棋王戦挑戦者決定トーナメント2回戦で、菅井竜也王位(26)に敗れ、来年3月までの本年度中にタイトルを獲得する可能性がなくなった。7月中旬から始まった連勝も8でストップした。通算成績は89勝16敗。

タイトル保持者のカベは厚かった。最終盤で持ち前の粘りを見せたが、まったく届かない。対局を終えた藤井は「仕掛けてからはまずまずの展開だったが、悪い手が出て、一気に苦しくなった。総合的にみて力不足でした」と悔しさをにじませた。

10歳上の菅井は昨年8月、羽生善治竜王を破って初タイトルを獲得、さらなる飛躍が期待されている若手棋士の1人だ。藤井と菅井の対戦は2度目。昨年8月、王将戦予選で藤井が完敗した。約1年1カ月ぶりの再戦に高校生プロは「成長した姿を見せたい」と意気込んでいたが、雪辱はならなかった。

持ち時間の使い方にも圧倒された。菅井は序盤から時間を極力、消費せず指した。藤井は4時間の持ち時間を使い切ったが、菅井は残り1時間50分と、貫禄を見せつけられた。

本年度中のタイトル獲得の消滅について「そういうことは気にしていませんが、そこ(タイトル)を目指していくためにもっと力をつけていかなければいけない」。タイトル獲得の最年少記録は、屋敷伸之九段が1990年の棋聖戦で達成した18歳6カ月。まだ藤井は16歳1カ月だ。14日には来年度の王位のタイトルを目指す予選で山崎隆之八段と対戦する。【松浦隆司】

◆将棋界の1年&タイトル戦 将棋界の1年の区切りは4月から翌年3月まで。オフシーズンはなく、タイトル戦とともに季節が進む。例年4月から「名人戦」、6月から「棋聖戦」、7月から「王位戦」、9月から「王座戦」、10月から「竜王戦」、新年1月から「王将戦」、2月から「棋王戦」のタイトル戦が行われる。今年4月から8番目のタイトル戦として叡王戦が始まった。藤井は本年度、8大タイトルのうち竜王戦、王座戦、棋王戦の3棋戦で本戦に勝ち進んでいた。竜王戦は2回戦、王座戦は準決勝で敗退。棋王戦が本年度内にタイトル獲得の可能性を残す最後の棋戦だった。