西武は、より一層、地域に愛されるチームとして、優勝を飾った。ファンクラブの8割を締める埼玉県、東京都の会員は08年比で1万4675人増の8万803人(122%)で、今年初めて8万人を突破。全国会員も10万人を越えた。

「埼玉といえば地元ファンに愛されている浦和レッズが有名だけど、今は西武ライオンズも同じように盛り上がっています。当然日本一になると信じています」。菊池雄星ファンの女性(34)は東京都小平市の自宅でネット中継を見ながら涙した。岩手県から上京して埼玉県所沢市に住み、県外に一時転居も「西武ファンなら西武鉄道」と西武多摩湖線沿線に引っ越した筋金入り。「電車や駅でもポスターがすごい増えた。地元チーム感はぐんぐん上がっています」。

埼玉県入間市のファン歴33年宇野大介さん(33)は台風でも行くつもりだった所沢のPVが中止になり、自宅でネット観戦。「一度も首位を譲らずの優勝。泣きました」。球場応援でつながったファン仲間とSNSで喜びを分かちあった。

西武は、埼玉県民と沿線住民を1500円で招待する感謝デーを随時開催している。住民を1500円で招待するフレンドリーシティー協定も県内35市町村に拡大。地元ファンが球場に足を運ぶきっかけ作りの努力をこつこつ続けてきた。

今春には埼玉県内の小学生約31万人にキャップを配布。小学生の息子2人を連れた埼玉県小川町の福川沙織さん(37)は「私の子ども時代は父に球場に連れてこられた感が強かったけど、今は3世代で通ってます」。以前は大谷翔平ファンだった小4の長男(10)も西武キャップをかぶり、「選手が生で見られるのがいい」とうなずいた。

「西武愛」は、野球ファンだけでなく、地元経済界にも拡大中だ。所沢市の会社員男性(39)は「地元企業の接待観戦先も東京ドームから西武ドームに変わっています」と明かす。

西武は16年から毎年、さいたま市の大宮球場と前橋市の敷島球場でも公式戦を開催。ウエルシアやヤオコー、埼玉トヨペット、武蔵野銀行など地元企業がゲームスポンサーに名を連ねる。上尾市のカタログ販売「ベルーナ」はヘルメット、群馬県甘楽町のこんにゃく製造「ヨコオデイリーフーズ」はキャップのスポンサーとして球団を支える。11年目を迎えた西武の「地元密着」は、深みを増している。【清水優】