2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会は21日、大会予算第3版(V3)について、昨年のV2と変わらず総額1兆3500億円と公表した。都内でも40度以上を記録した酷暑を受け、暑さ対策費などを計上したのに、なぜ1年前と変わらないのか。これには各団体のさまざまな攻防があった。

大会組織委員会の予算6000億円の中身には各項目で増減があった。大会運営にかかるオペレーション費と管理・広報費でそれぞれ50億円、輸送費で100億円増となった。

オペレーション費では食品安全対策費が増加要因の1つ。まさしくこれが暑さ対策の1つに当たる。食品を安全に提供するため、これまで以上に冷凍・冷蔵を厳重に管理する必要が出てきた。

管理・広報費では、ボランティアに支給する交通費(1日1000円)などが計上された。「やりがい搾取」「ブラックだ」などとネット上で批判が相次いだことを受け、今年9月に支給を決めた。

一方、これまで調整費などとしてきた項目で200億円を切り崩し、総予算の増減を0円とした。

12月に入っても組織委は、国際オリンピック委員会(IOC)とV3について応戦していた。IOCは昨今、立候補都市の減少について危惧しており、「五輪は金がかからない」という強いメッセージを世界中に発信する必要性に迫られている。

複数の関係者によると、IOCがある競技会場の整備費予算の付け替えを提案したという。会場の一部がレガシーとして恒久的に残るため、大会予算外に付け替えるべきとの主張だった。

これに組織委や東京都は反発。今更、見た目の大会予算を減らしても、国民や都民に見透かされることは目に見えており、逆効果になると主張した。

IOC的には見た目の予算さえ減らせれば全世界に「低コストで五輪が開催できる」と宣伝できるメリットがあるが、開催国・都市にとっては世論の反発が起きることは容易に想像できた。

一方で、組織委はIOCの“ぜいたく体質”に厳しい姿勢で臨んできた。その甲斐もあって今年2月、IOCが新しい五輪運営指針「新基準(ニューノーム)」を公表。VIP用ラウンジの縮小など118項目の指針を示した。東京大会ではこれまで90項目を適用。約43億ドル(約4700億円)の削減が実現した。既存施設の活用や、競技会場の借用期間短縮、選手村サービスの見直し、テストイベントの適正化などだ。

見せかけの削減は許さず、予算をたたきにたたいてきたと自負する組織委。それでも本格的な暑さ対策費はV3に入っていない。その点も含め、今後の予算削減見込みについて伊藤学司・最高財務責任者(CFO)は「今、我々としてはV3がベストな判断。これから何百億減らせるのであれば、この時点でV3に入っているので(削減は)難しい。しかし、不断の努力を続けていく」と語った。

ただ、会計検査院が指摘したように、大会開催に直接関係する「大会予算」以外にも、多くの関連経費が存在している。東京都が今年1月、関連予算として発表した8100億円も「大会予算」には入っていない。何が枠外にされているのか、注視していく必要がある。