元タレント「気仙沼ちゃん」こと白幡美千子さん(64)夫婦が経営する民宿「アインスくりこ」(宮城県気仙沼市大島)が50周年の節目を迎えている。

08年からおかみ修業をしてきた1人娘幸亜さん(35)が、17年12月に一記さん(40)と結婚。現在は、この“3代目夫婦”が白幡さん夫婦を支えながら、69年に開業した老舗民宿を守っている。

幸亜さんは、従業員15人の割り振りや食材の仕入れ、金銭管理や接客に至るまで実務を幅広く担当。すべて手作りという料理の味付け、デザートやパン作りまでこなす“スーパー若おかみ”として奮闘中だ。一記さんは、客室準備や配送などで新妻を支えている。

白幡さんは、若夫婦を温かく見守りながら「娘たちには残せるものは何でも残したい。母親が私に手編みのセーターを作ってくれたように、私も娘に手作りの物を残したかった。その1つがインテリアです」。旅館の壁には、色鮮やかな10以上のクロスステッチが飾られていた。

震災前は半年先まで予約で埋まる人気の宿だったが、津波被害の改修工事などで1年8カ月休業。営業再開後も以前のにぎわいは戻っていない。4月7日に本州と大島を結ぶ「気仙沼大島大橋」が開通することをにらみ、トイレのなかった一部客室に設置する工事を先日、実施した。白幡さんは恩師萩本欽一(77)の「人と同じことをするな」との教えを常に胸に刻み、「日々努力をして、自分の足で前に進まないといけない」と心掛けている。

両親の背中を見て育った幸亜さんは「じいちゃんとばあちゃんが残し、両親が引き継いだものを自分たちも、時代の変化に合わせながらやっていきたい」と決意を口にした。80年に白幡さん夫婦が結婚をしてから39年。3代目を迎えた老舗旅館が、新たな歩みを進めている。【松本久】