日本維新の会代表の松井一郎大阪府知事(55)と大阪市の吉村洋文市長(43)が8日、任期途中で辞職し、4月の統一地方選で「大阪都」構想を争点とする「ダブル選」に踏み切ることを表明した。知事選に吉村氏が、市長選に松井氏が「入れ替わり」で出馬する。知事選は21日、市長選は24日告示で、府市両議選と同じ4月7日に投開票される。いまなぜ「大阪ダブル選」なのか? 長年、大阪市政、府政を取材するジャーナリストの吉富有治氏(61)に聞いた。

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大阪市の大阪維新の会本部で行われた記者会見。松井氏は「みなさんと約束した大阪都構想がつぶされかけている。打破するためには、身分にこだわっていたのでは実現不可能。もう1度、世の中のみなさんの意見を聞かせていただきたい」と説明した。吉村氏は交渉決裂に至った公明について「だまされたまま終わることができない。国政も含めて全面対決する」と強調した。

維新VS反維新の構図となる大阪ダブル選。いまなぜ、ダブル選なのか。吉富氏は「統一地方選前半戦の府議選、市議選に首長選をぶつけて盛り上げるためです。松井氏らは自らも選挙を戦うことで風を起こし、維新の議員の後押しをしたい」と選挙戦略だと指摘する。

政令指定都市である大阪市を廃止し、府とともに特別区を新設する都構想の住民投票を実施するには、法定協で制度案を決定し、府市両議会で承認を得る必要がある。現在、維新は両議会で最大会派だが過半数に足りない。

「松井氏らの狙いは府議会の単独過半数と市議会の議席増です。ここをクリアすれば法定協のメンバー構成を変えることができ、公明党の協力なしでも住民投票への道筋が見えてくる」 一方でダブル選は維新にとっては「大きな賭け」だという。「どちらか1人でも負けると、都構想はアウト。維新は壊滅の危機です」。ここまで大きな「賭け」に出た理由がある。

「今回の統一戦では『橋下旋風』は期待できない」と吉富氏。これまでの統一地方選挙では「大阪維新の会」の創設者である橋下徹前市長(49)の強烈な発信力が旋風を巻き起こしてきた。橋下氏は15年5月の「大阪都構想」が住民投票で否決されると、任期満了の同年12月に政界引退。橋下氏がいない初めての統一選挙となる。

自民党は知事・市長選での独自候補の擁立を急ぎ、公明など各党との連携を目指す。吉富氏は「自民党が松井氏をターゲットに“大物”をぶつけてくるとの話もある」。追い風か、逆風か。思惑が交錯するダブル選が始まる。【松浦隆司】