将棋の羽生善治九段(48)が17日放送の第68回NHK杯戦決勝で郷田真隆九段(48)を破り、7年ぶり11回目の優勝を飾った。

羽生はタイトル戦を除く一般棋戦の優勝回数が45となり、故大山康晴15世名人を抜き、歴代単独1位となった。昨年末に27年ぶりに無冠になったが、平成最後の一般棋戦で優勝し、健在ぶりを示した。

やはり強い。決勝では鋭い攻めを連発し、77手で勝利を収めた。新記録を樹立した羽生は「時代背景や棋戦の数も違うので比較はできない」と前置きしながらも、「NHK杯で優勝して、うれしく思っています。1つ前進することができてよかった」と笑顔で話した。

羽生は91年以降、常にタイトルを保持し続け、96年には7冠独占を達成。だが近年は若手が台頭し、昨年は棋聖、王位、竜王の3つのタイトルを失い、無冠になった。本年度は一般棋戦の優勝もなく、「衰え」もささやかれたが、新たな1歩となる復活Vを飾った。

今期のNHK杯戦では1970年代生まれの「羽生世代」の健在ぶりも見せつけた。ベスト4には、羽生、郷田のほかに丸山忠久九段(48)と森内俊之九段(48)が残った。最年少プロの藤井聡太七段(16)が2月に朝日杯オープン戦を2連覇するなど、将棋界の主力だった「羽生世代」が世代交代の波に押され気味の中での優勝だった。

若手はAI(人工知能)を駆使するなど、最新の将棋を研究し、将棋の内容も変化した。トップを走り続けてきた羽生も「変化」を感じている。年度最後を優勝で終わり、足踏み状態となっている前人未到のタイトル通算100期の達成へ、弾みをつけた。

◆NHK杯と羽生九段 NHK杯は1951年(昭26)にラジオ放送でスタートした。50人による勝ち抜き戦で、持ち時間各10分、以後1手30秒の早指し戦。タイトル戦ではないが、全対局がテレビ中継されており(Eテレで毎週日曜午前10時30分~)、将棋ファンに人気の棋戦の1つだ。最多優勝は羽生の11回。羽生の強さを初めて一般に知らしめたのもNHK杯で、昭和最後となった第38回(88年度)大会で、当時五段ながら3回戦から決勝まで大山康晴、加藤一二三、谷川浩司、中原誠の現役名人経験者4人を立て続けに連破。18歳の史上最年少で初優勝を飾った。