史上最年少プロ棋士、藤井聡太七段(17)が1日、大阪市の関西将棋会館で指された第69期王将戦2次予選決勝で、永世名人の資格を持つ谷川浩司九段(57)を57手で破り、初めて挑戦者決定リーグ戦に進出した。

今月下旬以降に始まるリーグ戦は7人の棋士が参加する総当たり。高校生プロが最年少での初のタイトル獲得へ、前進した。

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あこがれの棋士との初めての真剣勝負。対等の立場で盤を挟めたことがうれしかった。藤井がレジェンド・谷川を相手に積極的に踏み込み、落ち着いた指し回しで完勝した。

対局後、「激しい展開だった」と振り返った藤井は「初めて谷川先生と対局することができてよかった。子どものころ、谷川先生の鋭い『光速の寄せ』にあこがれていました」。谷川の終盤の強さは「光速流」と呼ばれ、藤井の強さの1つに終盤力がある。

語り草になっているエピソードがある。藤井が小学2年のとき、名古屋市内で行われた将棋イベントで谷川に駒を2枚減らしてもらうハンディ付き(2枚落ち)で指導対局を受けた。対局の終了時間が迫り、形勢不利になった藤井少年は、谷川から「引き分けにしようか」と提案された瞬間、将棋盤に覆いかぶさって泣きだした。

あれから9年。谷川と同じ中学2年でプロ入りした「天才中学生」は、デビュー29連勝など数々の記録を作り、この日の舞台に登場した。ただ、プロになり、負けも、連敗も経験した。谷川は「藤井さんは非常に落ち着いて指されていた。それより私の内容が悪すぎた」と反省しながらも、あの日の少年が成長した姿を見た。

藤井が初めて進出を決めた挑戦者決定リーグ戦は、今月下旬以降にスタートする予定。棋士7人の総当たりで、優勝者が渡辺明王将(35)への挑戦者となる。藤井は豊島将之2冠(29)、広瀬章人竜王(32)らトップ棋士とタイトル初挑戦を懸けて戦う。タイトル戦で、年内に挑戦者になる可能性があるのは王将戦のみとなっている。この日、王将戦で敗退していれば、年度内のタイトル獲得は消滅していた。

「(王将戦リーグ入りで)トップ棋士の方と多く対戦できるのは楽しみで、思い切りぶつかっていきたい」。タイトル戦出場の最年少記録を持つのが屋敷伸之九段(47)で、挑戦は17歳10カ月、獲得は18歳6カ月。リーグ戦を勝ち抜けば、屋敷が持つ最年少タイトル挑戦記録を大幅に更新する。高校生プロが史上最年少のタイトル挑戦を目指す。【松浦隆司】

◆王将戦挑戦者決定リーグ シードの4棋士、2次予選を突破した3棋士、計7棋士の総当たり。確定している顔触れは、久保利明前王将(44)、豊島将之名人(29)、元竜王の糸谷哲郎八段(30)、広瀬章人竜王(32)。他の2次予選決勝カードは、三浦弘行九段(45)対佐藤天彦九段(31)、羽生善治九段(48)対郷田真隆九段(48)。藤井以外は全員が、現役タイトル保持者か、獲得経験者。渡辺明王将(棋王・棋聖=35)との王将戦7番勝負は来年1月開幕予定。