安倍晋三首相が、父の安倍晋太郎外相(当時)の秘書官だった84年9月、関係が取りざたされている「ジャパンライフ」(経営破綻)の山口隆祥元会長とともに米ニューヨークを訪れていたことが6日、分かった。外務省が野党追及本部の会合で、省内に保存してあった渡航記録に首相の名前があったことを認めた。

首相は2日の国会答弁で山口氏との個人的関係を否定したが、野党は「虚偽答弁」と反発。9日の国会閉会後も、追及を続ける構えだ。

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野党追及本部の会合に出席した外務省の担当者は「安倍晋太郎外相が、国連総会出席で(ニューヨークに)渡航した際の一行名簿に、当時秘書官だった安倍総理の名前が記載されています」と、述べた。35年前の首相と山口氏の「接点」が、明らかになった。

この訪問には、マルチ商法被害が長年問題視されながら、15年の「桜を見る会」に首相枠で招待された疑いがある山口氏が、訪問団の一員で同行していたことを、86年2月の衆院予算委員会で晋太郎氏が認めた。当時すでに問題視されていたジャパンライフについて問われた際、「(山口氏が訪問団に)おられたことは事実です」と述べた晋太郎氏の議事録が残っている。

首相は2日の参院本会議で、山口氏と「個人的な関係は一切ない」と否定したが、父の秘書官時代から面識があった可能性が浮上。追及本部事務局長を務める立憲民主党の黒岩宇洋氏は「安倍秘書官は当時、父とずっと行動をともにしていたと聞く。親子で家族ぐるみの付き合いだったのではないか」と指摘。個人的関係を否定した首相答弁は「虚偽答弁の可能性が高い」と、アベコベを批判した。

「桜」問題をめぐっては、招待者名簿や電子データなど、核心を握る行政文書の不可解な消え方が続出している。しかし今回は、外務省の渡航記録、予算委の議事録が保存されていたため、首相と山口氏の「接点」が確認された。名簿などの提出に頑として応じない内閣府の担当者の前で、黒岩氏は「こういうふうにしてもらえれば、話が進む」と、皮肉まじりに述べた。

野党側は、山口氏の招待状に記された、首相枠の疑いが強い「60番」の事実関係についても、担当の内閣府にただしたが、担当者は「(省内で事実関係の)聞き取りをするかどうか、省内で検討します」と、やる気のない回答を続けた。野党は、国会閉会日の9日以降も幕引きとはしない方針だが、事実はどこまで明らかになるか。【中山知子】

○…「桜を見る会」問題では、ほかにも首相らの国会答弁で食い違いが出ている。首相は当初、招待者の人選に「関与していない」と述べたが、その後「推薦者について意見を言うことはあった」と修正。「最終的なとりまとめには関与していない」と「招待者」と「推薦者」を言い分けているが、野党は虚偽答弁としている。昭恵夫人の推薦をめぐっては、衆院内閣委員会で菅義偉官房長官が否定した直後、内閣府の大西証史内閣審議官が首相の事務所が参加希望者を募る際、夫人による推薦があったと認め、ちぐはぐさが露呈した。