東京都練馬区の自宅で長男の熊沢英一郎さん(当時44)を刺殺したとして、殺人罪に問われた元農林水産事務次官熊沢英昭被告(76)の裁判員裁判が13日、東京地裁で開かれ、検察側は懲役8年を求刑した。

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若狭勝弁護士の目 懲役8年が相当とみていた。1人殺害すると懲役15年がベース。動機や方法によってはベースを上回るが、逆にくむべき事情があれば懲役12年、10年と下回る。

今回のように、懲役10年を下回ることはあまりない。検察側は被害者の家庭内暴力など、くむべき事情があるとみているのだろう。一方、殺害に至るまでに専門家に相談するなど、解決できる可能性があったことや命の重みを考え、懲役8年を下回ることは良くないと判断したのだろう。

弁護側が求めた執行猶予付き判決だが、執行猶予はそもそも懲役3年以下でないとつけられず、最低でも懲役5年以上とする殺人罪では普通つかない。一方、酌量すべき事情があれば、殺人罪でも執行猶予がつく可能性がある。だが今回、執行猶予は難しく、懲役6~7年の判決が出るのではないか。(元東京地検特捜部副部長)