日本国内で17日、日本サッカー協会の田嶋幸三会長(62)が新型コロナウイルスに感染するなど、国内での感染拡大が続いている。

感染拡大は日本国内だけにとどまらず、欧州や米国では直近の1週間で爆発的に感染者数が増え、パンデミック状態が続いている。単身で異国の地にいる日本人はどのような心境なのか。米国・ニューヨーク州在住の20代女性が18日、日刊スポーツの電話取材に応じ、現地の状況と思いを告白した。

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私は現在、日本でいうダンスの専門学校に通い、「本場のダンス」を学んでいます。大学を卒業し、昨年8月末、日本でダンスを職にすることが難しいため、海外でダンスの技術を学びたいと思った私は、1人でアメリカに渡米しました。当時は住む家も決まっておらず、ホステル暮らしをしながら、物件を探す毎日でしたが、現在は、ニューヨーク州マンハッタンで日本人女性4人と、シェアハウスで生活をしています。

現在、アメリカでもコロナウイルスの感染拡大が続いています。本来なら、5月末まであるはずの学校も、一昨日、休業の知らせが届きました。しかし、アメリカの人たちは、危機感があまりなく、無関心の人が多い印象です。街の人通りもあまり変わりませんし、マスクをしていません。

電車に乗っていても、マスクとビニール手袋をしている人が、2人くらいいる程度です。マスクをしていると「コロナ」「病気持ち」「大げさ」というような目で見られます。そのため私は、なるべく顔を隠し、アジアの人に見られないよう、サングラスをかけ、フードをかぶり、変質者のような格好で外に出ます。

実際に、アジアの人に対する差別はあります。私は顔立ちがハーフと間違えられることが多いため、被害はないですが、友人が突然「コロナ」と叫ばれたり、マスクをしていないアジアの人が刺された、電車の中でアルコールを吹きかけられたとニュースで見たことがあります。

中には、やはりコロナウイルスを過剰におそれている人もいます。まだ、米国でコロナウイルスがあまり報道されていなかった2月24日のことです-。ダンスの演技中に、手で押さえ、くしゃみをしてしまいました。その後、仲間の肩を触って踊る振りがあったのですが、「その手で触らないで、あなたの菌が移るのよ!」と言われて、驚きました。私が悪かったことなのですが、演技後、何度も肩をアルコールで拭いていました。

学校も無くなった今、基本的には外出を控えていますが、買い出しのために外出をすることがあります。私の住んでいる地域は車の通りは以前と変わらず、マスクをしないで歩く通行人の量も変わりません。8月に渡米した時と同じ光景がスーパーで広がっています。

マスクは着用しませんが、スーパーでは5日ごろから、ハンドジェルがニューヨークのどこを探しても見つかりません。他にもトイレットペーパーや卵、水、冷凍食品など、日持ちする食品はすぐに品切れになります。今のところ、食品は翌日には入荷しますが、長期化するとどうなってしまうのか心配です。

飲食店もテークアウト専門が多く、スーパーのイートインコーナーも封鎖されています。先日、テークアウト限定のスターバックスに、お客さんが誰もいなかったことから、経済的には大打撃を受けていると思います。

私は13~21日まで日本に一時帰国する予定でしたが、米国に入国後2週間の隔離生活や、もし、戻れなくなったらと考え、帰国をやめました。危険だから日本に帰ってきてと両親に言われている友人もいます。

私は、本場のダンスを学び、技術を身につけ、なりわいにする夢をかなえる覚悟を持って渡米しました。5月末までのパフォーマンスで4公演が中止になりました。まだ、言葉の壁が少しある異国の地で、見えないウイルスと闘うことに怖さもあります。

正直、せっかく来たのに、勘弁してくれという思いもあります。でも、学校が無くなった今、家の中でストレッチや筋トレ、こんな時にこそ、語学をもっと習得できるチャンスだと、プラスに捉えています。そして、事態が収束したときには、以前の私よりも良いパフォーマンスができるように-。自分の身は自分で守る。今はそんな思いです。(聞き手・佐藤勝亮)