政府の肝いり観光支援事業「Go To トラベル」は、22日からのスタート直前に東京都だけが除外され、観光業界にも混乱が拡大している。

千葉・勝浦市の「勝浦ホテル三日月」では19日、キャンペーンの利用確認やキャンセルなどの問い合わせが続いた。同ホテルは今年1月に中国・武漢市から帰国した邦人を受け入れて話題になり、2度の休業を経て、今月3日に再々オープンしたばかりだ。政府の混乱を受け、再び「逆風」にさらされている。

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太平洋をのぞむ南房総の「勝浦ホテル三日月」が再び、コロナ禍の荒波に翻弄(ほんろう)されている。

政府は、22日から「Go To トラベル」をスタートするとしているが、16日になって当初の全国一律での実施から一転、東京だけ除外すると発表した。同ホテルには、この週末に「首都圏を中心にキャンペーンの適用ができるかどうか、というお問い合わせがあったり、予約のキャンセルも」(同ホテル企画室)出るあわただしい状況に陥った。

ホテル側によると、同ホテルの利用者は、東京など首都圏からのファミリー層が中心で「1泊2日で、ご家族3世代という方が多い」(同企画室)という。それだけに、1人あたり最大で1泊2万円がクーポンで割引される今回のキャンペーンは、大きなメリットになるはずだった。

しかし、利用客が多い都内在住者や東京発着の場合は、対象外に。今後、南房総地区の観光にブレーキがかかる可能性も出てきた。

勝浦ホテル三日月は、コロナ禍に揺れ続けている。1月29日、中国・武漢市から帰国した邦人を受け入れるために全館休業し、話題になった。3月1日に再開したが、4月7日の緊急事態宣言を受け再び休業に。今月3日、再々オープンしたばかりだ。

観光業界は、コロナ感染拡大による自粛で打撃を被った。「Go To トラベル」は、夏の観光シーズンに向けて、春休みや5月の大型連休の利用者減を挽回する追い風になると見込まれていた。ホテル側は「ようやく風評被害も拭い去られてきた感じがする」と話すが「いちばんの繁忙期は例年7、8月ですが、今年はまだまだ例年の集客まで届いておらず厳しい状況」。客足が戻らない中で、「Go To-」の効果も見通せないままだ。

CMでおなじみのフレーズ「ゆったり、たっぷり、の~んびり」を、キャンペーンで、もっと楽しんでもらうはずだった同ホテルに限らず、首都圏の利用客が多い観光業界には不安が広がるばかりだ。【大上悟】

◆勝浦ホテル三日月の休業の経緯 1月29日から2月13日まで中国・武漢市から政府チャーター機で帰国した邦人を受け入れ、休業した。受け入れ終了後、2月15日~29日まで全館消毒、清掃作業を実施。帰国者の患者などを受け入れた亀田総合病院(千葉・鴨川市)の感染症専門医の監修によるガイドラインを基に約120人の従業員が指導、研修を受けた。ホテル玄関に客の体温を検知するサーモグラフィーを設置、従業員はフェースシールド、マスクの着用、各自が消毒液を携帯し、使用する。バイキング形式の食事を小皿に分けたり、部屋での食事プランを増やすなどの対策をして、3月1日から営業を再開。緊急事態宣言発令による再休業を経て、7月3日から営業を始めた。