将棋の第78期名人戦7番勝負第6局(14~15日、大阪市「関西将棋会館」)で豊島将之名人(30)を下し、4勝2敗で新名人となった渡辺明3冠(36)が終局後、記者会見に応じた。
-対局を終えて、改めて今の心境は
渡辺 まだ実感はない。これから何日かたって、実感が出てくるのかなと思います。
-名人はどんなタイトル?
渡辺 名人戦はずっと出てみたいタイトル戦だった。なかなかチャンスがなくて、近年は「ちょっと縁がないかな」とも思っていた。あと1勝となってもイメージはなかった。
-ほかのタイトルはたくさん獲得しているが
渡辺 今回が初出場。ほかのタイトル戦に比べると遅くなった。名人というタイトルを意識する機会もなかった。
-年下の豊島名人を相手に制した意味合いは
渡辺 相手の年齢はあまり意識してなかった。初めて出て、「あと何回出られるか」と考えたとき、そんなにチャンスはないだろうし、今回何とかしたいという気持ちもあった。
-豊島名人の印象は
渡辺 この1~2年、いろいろな棋戦で当たっている。お互い手の内がある程度分かっていると思う。序盤からプレッシャーをかけられることが多かった。作戦面での準備が必要で大変なところが多かった。
-20歳で初タイトルを獲得後、新しい人も出てきたなかで、これからどう戦っていくか
渡辺 この年齢になると、「次がある」と考えない。タイトル戦に出られる棋士のキャリアとしては後半戦。いつまでやれるかも含め、今回は考えた。
-変則日程で、タイトル戦が棋聖戦と並行して行われたが
渡辺 日程的にきつい部分はあった。タイトル戦で活躍する人たちは皆、同じ条件。こういった状況でタイトル戦を行うのは何度もないと思う。日程的には仕方がないと思って戦った。体調面と研究のバランスが大変だった。
-1カ月前に棋聖戦で負けてからの立て直し方は
渡辺 名人戦と両方終わって、ひと区切りと思い、6月の対局再開後、バタバタと対局をこなしてきた。棋聖戦に負けて落ち込むようなところはなかった。結果が出たところで、次の目標を考えようと思っていた。(ここで)振り返りもしたい。次のことはしばらく考えたくない。
-シリーズの内容を振り返って
渡辺 スコアも内容もシーソーゲームが続いた。第5局に耐えて勝つことができて、いい流れを継続して勝ちたいと思っていた。先週(第5局)からあまり時間がなかったし、余計なことを考えずに済んだ。ただ、昨日からは1手1手の重みは感じた。
-若手との世代闘争が厳しくなるが
渡辺 何歳ぐらいまでタイトル戦に出られるか意識している。出る機会が続くわけではないし、年々厳しくなると思う。目の前の対局と、目の前の相手に向かっていくだけで精いっぱい。40歳になった時に、どれくらい持ちこたえられるか考えながら取り組んでいる。