コロナ禍で囲碁、将棋の就位式が大幅に簡略化される。21日、東京・千代田区「日本棋院」で行われた第58期十段戦を制した芝野虎丸十段(20)の就位式は、主催者ら25人だけが出席。わずか10分で終了した。20日に王位を獲得した将棋の藤井聡太2冠(18)の就位式もこれまでとは違ったものになりそうだ。

本来なら、タイトル戦の区切りとなる式典。都心のホテルや、東京・日比谷公園でカレーライスがおいしいレストラン「日比谷松本楼」といった宴会場に関係者を招待する。200~1000人規模のパーティー形式で開催される。

しかも、主役と親交のある人に花束贈呈や祝辞をお願いしたり、司会を頼み、鏡開きなどで祝宴を盛り上げる。1人1万円といった会費制で一般招待し、扇子などのお土産をつけたり、抽選で主役とツーショット撮影といったファンサービスもある。

しかし、この日の就位式は内容を省略せざるを得なかった。「密」を避けるためだ。芝野十段は「お客さまがたくさんいるのもうれしいですが、時節柄、仕方ないです」。同席した日本棋院・小林覚理事長(61)は、「就位式がファンへのお披露目の機会でもあるという意味では残念。当分このような形になると思う」と話した。

来月には、7月に史上最年少で初タイトルを獲得した藤井2冠の棋聖の就位式が予定されている。日本将棋連盟広報課によると、「出席者は藤井以下、主催者と表彰式の介添え者、代表撮影者など10人前後。式だけで済ます」としており、祝いの席にもコロナ禍が影を落とす。 【赤塚辰浩】

○…規模だけなら、93年の将棋名人戦で49歳11カ月の史上最年長で初の名人となった、故米長邦雄元日本将棋連盟会長の就位式が伝説だろう。司会は、仲良しのタレント萩本欽一。東京・新宿「京王プラザホテル」でのセレモニーには、2000人もの関係者や、将棋好きの著名人、ファンらが祝福に駆けつけた。式の中で列席していた羽生善治九段の名前を挙げ、「次の私の首を取りに来るのはこの男」とスピーチ。会場が盛り上がるシーンもあった。