東京・池袋の都道で昨年4月に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の初公判が8日、東京地裁で開かれた。同被告は松永拓也さん(34)ら遺族に謝罪するも「アクセルを踏み続けたことはない。車に何らかの異常が生じたから」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。

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松永さんは会見で、事故から1年半で初対面した飯塚被告の無罪主張について「予想していたとはいえ残念でならない」と失望した。そして「車の不具合を主張するなら謝って欲しくない。本当に申し訳ないと思うのであれば、しっかり罪を認めて刑が言い渡された後でいい」と突き放した。

飯塚被告は、裁判冒頭の謝罪の際も視線を向けなかったという。松永さんは「公判中、1回だけ目が合ったんですけど、すぐそらされた。最初に謝罪した時も私の目を見ていなかった。そもそも、謝られたくないけれど誰に向けて謝っているのか」と首をかしげた。

上原さんは「大切な娘と孫を奪っても人ごとのように話す。あなたの息子と孫が同じ目に遭ったら、どうなの? と問い掛けたかった」と悔し泣きした。そして「法廷で飯塚を見て、人間の心を持っているのかなと思えた」と憤った。

高橋正人弁護士は、被害者参加制度の希望者が多かったため、内廷扱いとした傍聴席の一部で遺族が遺影を持つことを認めなかった東京地裁の対応を、遺族に被害者参加か一般傍聴席で遺影を持つかの二者択一を迫ったと批判した。松永さんの母は一般傍聴席で傍聴したといい、松永さんは「遺族としては亡くなった2人とともに裁判に参加したいという思いも大事。今後も裁判所に言い続けたい」と語った。

 

◆池袋暴走事故 19年4月19日午後0時25分ごろ、東京都豊島区東池袋4丁目の都道で乗用車が交差点2つを含む約150メートルにわたって暴走。赤信号を無視して横断歩道に突っ込んだ。自転車に乗っていた松永さん母子が死亡し、運転していた飯塚元院長と助手席の妻を含め2歳から90代の男女9人が重軽傷を負った。