第164回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が20日、都内で開かれ、芥川賞を宇佐見りん氏の「推し、燃ゆ」、直木賞を西條奈加氏の「心(うら)淋し川」が受賞した。

「オルタネート」が直木賞にノミネートされていたNEWS加藤シゲアキ(33)、「母影(おもかげ)」が芥川賞にノミネートされていたロックバンド、クリープハイプの尾崎世界観(36)の受賞はならなかった。

宇佐見氏の受賞作「推し、燃ゆ」に関し、選考委員の島田雅彦氏は「文学的偏差値の高い作品」と評価。「こう書けばプロの関心をそそるのではないか。かゆいところに手が届く、またあえてかゆいところをかゆいまま放っておく。そのセンスがいい」と話した。

少女視点で描かれる尾崎の「母影」については「子ども視点での語り手の是非をめぐる議論があった」、「語りのポイントがうまく処理できていなかった」などと語った。

西條氏の受賞作「心淋し川」について、選考委員の北方謙三氏は「マイナス評価がなかった。手慣れていて、欠点という欠点がないのが欠点という評があった」。加藤の「オルタネート」は、4作品での決選投票に残ったとし「構築された世界がある意味漫画的という意見もあったが、青春群像劇として面白かった」。また「加藤シゲアキを受賞させようという機運もあったが、もう1作くらい待ってみようと。個人的にはとっても惜しかった」とした。

宇佐見氏は、21歳8カ月での芥川賞受賞。当時19歳の綿矢りさ氏、20歳の金原ひとみ氏に次ぐ、史上3番目の若さでの受賞となった。

芥川賞候補作は宇佐見りん「推し、燃ゆ」、尾崎世界観「母影(おもかげ)」、木崎みつ子「コンジュジ」、砂川文次「小隊」、乗代雄介「旅する練習」。

直木賞候補作は芦沢央「汚れた手でそこを拭かない」、伊与原新「八月の銀の雪」、加藤シゲアキ「オルタネート」、西條奈加「心淋し川」、坂上泉「インビジブル」、長浦京「アンダードッグス」(敬称略)。