東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、自身の女性蔑視発言問題で辞意を固めたことは、菅政権に与える影響も少なくない。

菅義偉首相は、森会長の進退については組織委員会が判断すべき問題だとして、距離をおいてきた。森会長は今も政界に影響力を持ち、鈴をつけようとする動きは誰からもみられなかった。ただ、森会長の会見に国内外の批判がやまず組織委員会の対応も後手に回り、野党からは首相自身の責任を問う声へと批判対象が拡大。首相は国会論戦で「あってはならない発言だ」と批判的な立場を取ったものの、辞任を促すよう求める野党の追及にも防戦一方。野党関係者は「逆に『森さんに何も言えないのか』と、リーダーシップのなさを露呈する皮肉な結果も招いた」と、指摘する。

ただ森会長の謝罪後、官邸サイドは組織委員会サイドに水面下で働きかけてはいたという。菅首相は東京大会の成功に並々ならぬ意欲を持つ。大会成功は、低迷する政権浮揚のきっかけにもなるからだ。森会長には、自民党出身派閥の後輩でもある安倍晋三前首相が会長就任を要請。安倍長期政権ではともに大会準備に当たってきた。昨年秋に就任したばかりの菅首相は、安倍前首相ほど森会長との個人的な関係が深いわけではない。そんな立場もあってか、首相が積極的に調整に入るような場面もなく、どこか今回の問題に及び腰のように映ってしまったと見る向きもある。

国会関係者は「菅さんにとっては、調整力や影響力がある森さんに辞められ、大会成功に向けて頼れる存在をなくすことになる。首相が今回の問題解決に指導力を発揮したわけでもない。会長交代で世論の反発が収まるかどうかも見通せず、首相には今回の問題はマイナスな側面のほうが多いのではないか」と、政権への影響を解説した。【文化社会部次長 中山知子】