東京五輪・パラリンピックの聖火リレーは27日、福島県南会津町から郡山市までの7市町をつなぎ、福島県での3日間を終えた。白河市を走った農作物直売所勤務の矢吹正男さん(74=矢吹町在住)は、1964年(昭39)東京五輪でも聖火ランナーを務めており、57年ぶり2度目の大役を果たした。白河農工(現白河実)陸上部だった当時の仲間や同級生でもある妻トシ子さんらの応援を受け、再び貴重な宝物を得た。

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矢吹さんにとって、57年ぶりの大舞台は、青空のごとく晴れやかだった。輝くトーチを右手で高々と掲げてスタートすると、家族や仲間の拍手する姿を確認しながら手を振り続けた。「友人たちが『2回目おめでとう』のボードを作ってくれた。前回走った時は、すごい人、人、人だったし、夢中で約2キロの距離を走り抜けてトーチを次に渡すことで精いっぱいだった。今回は応援してくれる人を見る余裕もあったし、天気も良く、気持ち良く、楽しく走れました。こんなに光栄なことはありません」。感動や喜びをかみしめた約200メートルだった。

健康維持のために妻と2人で約1時間のウオーキングが日課だ。走る前にはトシ子さんが握った梅とサケが入ったおにぎり2個で腹ごしらえ。前回は高校の同級生の1人として沿道で声援してくれたが、矢吹さんの親戚がトシ子さんの兄と結婚したことが縁で、結婚に発展。今回も一番近くで勇姿を支えてくれた。

トーチは約7万円で購入する。前回、白河市では個人所有は許可されなかったが「実は私、家に前回の物を持っているんです。結婚式の時に知人が白河市と交渉してプレゼントしてくれたんです。まだ日本で2本のトーチを持っている人はいないと思う。また宝物が増えました」。ケースに入れた家宝と並べて飾るつもりだ。

11年には東日本大震災、先月には福島県沖地震で県内は大きな被害を受けた。「2回も五輪に絡めた健康な体に感謝したい。復興五輪として元気な姿を全世界にアピール出来たならうれしい。自分にとっても今後の人生の励みです」。2度目の聖火は、さらに格別な充実感に満ちていた。【鎌田直秀】

◆27日の聖火リレー 福島県南会津町から下郷町を経て中通り地方に移動し、須賀川市内では、メキシコ五輪男子マラソン銀メダリストの君原健二さんが走った。27日のゴール地点の郡山市では、北京五輪の陸上女子400メートルと1600メートルリレーに出場した千葉麻美さんが聖火をつないだ。28日から栃木県に入り、足利市総合運動公園陸上競技場ではタレント勝俣州和が第1走者。那須烏山市内では、104歳の理容師箱石シツイさん、08年北京五輪陸上女子1万メートル代表の渋井陽子さんらが走る。