東京五輪の聖火リレーは17日、12県目となる香川県に入った。多度津町では、全国2例目として民営化された高松空港の社長に2019年に就任した小幡義樹さん(56)がトーチを高く掲げた。途中伴走者から「もうちょいゆっくり」と3回にこやかな“注意”が入る力走ぶりだった。

前職は東京・丸の内の三菱一号館美術館のGMを務め、年間約40万人を集客するらつ腕を発揮した。「香川県は草間弥生さんのカボチャのオブジェが常設展示されている直島のあるアート県。四国の玄関口となる空港なので、地元の若いアーテイストの作品を展示して、この聖火リレーのように様々なみなさんに楽しんでもらいたい」と小幡さんは力を込める。

2019年には乗降客数が開港30年目にして始めて200万人を突破(215万人)。四国空市場という、香川だけではなく四国4県の特産物コーナーを設置して空港利用の幅を広げ、オリジナル商品のピクルスには飛行機の形のニンジンを入れるなどアートの香りを残している。

空港事務所には社長室はなくデスクはすべてフリーアドレスで社員同士が自由に意見交換できる環境になっている。順調に利用客が増えていったが、やはりコロナウイルスの感染拡大の影響で昨年はがらんとした1年を送ってしまった。

「うちだけではなくどの業界も苦しい1年だった。それだけに1年延期になった聖火リレーはどうしても走りたかった」と話す。そして「沿道からの声援が温かかった。聖火の炎がコロナ禍の出口の見えないトンネルを照らす希望の光であってもらいたい」と握りしめたトーチを、「まだ考えていませんが空港に展示しますか」と空港内に新たな五輪アートが登場する日も近そうだ。【寺沢卓】

◆17日の聖火リレー 香川県の初日は雨からのスタート。石垣の長さが日本一の丸亀城は2018年、台風24号の猛威にさらされ、石垣の一部が崩壊したが修復作業が着々と進んでいる。多度津町からは晴れ間が見えるようになり、三豊市では、鏡のように海面に姿が写る遠浅の父母ケ浜(ちちぶがはま)では、ランナーが夕日を背負って走り抜けた。18日は坂出市から始まり、小豆島町では男子バレーボール日本代表主将として1992年バルセロナ五輪、監督として2008年北京五輪に出場した植田辰哉氏(56)がトーチを握る。最後は高松市で香川県の2日間を終了する。