新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は8日、東京五輪・パラリンピックのリスク提言を、国際オリンピック委員会(IOC)に直訴する決意を固めた。

参院厚生労働委員会で五輪開催をめぐる感染や、医療リスクなどの提言を「IOCにも日本の状況を知ってもらって、理解してもらうことが大事」と、毅然(きぜん)と語った。

提言時期は、これまで通り、「20日前後にオリンピック委員会は重大な決断をすると理解している。それよりも前に」とした。提言手段は「私はIOCに直接のコミュニケーションのチャンネルを持っていません」とした上で、「どこに我々の考えを出すか考慮中ですけど、出した人から、IOCにぜひ、我々のメッセージを伝えていただきたい」と、悲壮感を漂わせた。

尾身会長の強硬姿勢と、提言の影響力に、政府は神経をとがらせている。西村康稔経済再生相は7日に「分科会はオリンピックの開催の可否など審議する場所ではありません。権限はありません」と一蹴した。だが、この日の立憲民主党の田島麻衣子氏から、「分科会がリスク評価することについて政府の諮問は必要なのか」との質疑に、「諮問答申の規定はない」(内閣官房)と明らかになった。

これを受けて、田村憲久厚労相の対応も一変した。「分科会の中で決定された事項は当然、政府の中での決定事項」と、容認に転じた。4日に尾身提言を「自主的な研究の成果の発表」と、公式には認めない姿勢に批判が集まると、「あくまで一般論として申し上げた」と釈明し、ついには容認せざるを得ない状況に追い込まれた。きょう9日の党首討論で野党と1対1で臨む菅義偉首相にも「尾身提言」が重くのしかかっていく。【大上悟】