3日に発生した静岡県熱海市伊豆山の土石流災害で、第1波の激流を真正面から受けた消防団詰め所の3階に住む建築業山田裕之さん(32)が4日、救出までの5時間の様子を語った。「死ぬのかな」と当時の恐怖を振り返ったが、5日から不明者の捜索活動に消防団の一員として合流するという。

山田さんの自宅は消防団詰め所の3階の部屋。熱海市消防団第4分団の詰め所ビルになっている。山田さんは妻(27)と息子(1)と家族3人で部屋で過ごしていた。

午前10時ごろに地鳴りのようなごう音が聞こえて「車のスリップとも違う。なんだろう」と山側に目を凝らすと小さな崖崩れが見えた。消防団の仲間にSNSで写真とともに異常事態を伝えた。この情報が土石流第一報となり、伊豆山地区の住民避難が始まった。

次第に土砂量が多くなり「カッパに着替えようと3階の自宅に上がったら1階が土砂で埋まってしまった」。家族3人で行き場もなく、次々と知り合いの家が流されるのを窓から見送るしかなかった。

土石流は何度もビルにぶつかってきた。「体感では何十回も衝撃を感じた。正直、死ぬのかな、と覚悟した」と振り返った。怖がる妻と息子を励ましながら約5時間にわたって缶詰めになり、自衛隊がはしごを用意してくれて救助された。

4日は市内にある妻の実家に身を寄せ、消防団としての活動の準備を調えた。5日からは土石流の被災現場に戻る。「友人のお母さんが連絡とれていない。自分たち家族は助けられた。今度は私が現場で汗をかいてきます」と山田さんは口元を引き締めた。【寺沢卓】