日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(67)が、英BBCテレビの独占インタビューで2019年12月に起きた前代未聞の日本脱出劇の詳細を語った。

計画は顔が見られないようどこかに隠れることだったとした上で、「唯一顔を見られず潜むことができるのは箱か荷物の中だけだった」とゴーン被告。楽器を入れる箱に隠れたことは、「その時期、日本では多くのコンサートが行われていたので、もっとも論理的な方法だった」と語った。

同被告によると、逃亡を決めたのは、逮捕から数カ月間後に釈放された際に妻のキャロル容疑者とは一切接触できないと言われた時だったという。

そこから逃亡に向けた計画が始まり、逃亡当日は計画を悟られないよう可能な限り普段通りの行動を心がけ、「普段通りの服を着て、普段通り散歩もした」という。逃亡の瞬間は一変して「これまでスーツ姿だった自分が着たことのないトレーナーやジーンズを購入し、これまで行ったことのない場所に行く。それは計画が成功する可能性を最大限に高め、注目を浴びないようにするためだった」と綿密な計画だったことを明かした。

新幹線で東京から大阪に移動し、プライベートジェット機が待機する空港近くのホテルで箱の中に入ったという被告は、「箱に入ったら、過去のことも未来についても考えず、今その瞬間だけを考えていた。恐怖はなく、ただ”この機会を逃すわけにはいかない。失敗すれば日本で人質として生活しなければならない”と目の前のことに集中していた。飛行機は午後11時に出発予定だった。箱の中で離陸を待っていた30分間は、おそらく私の人生の中でこれまで経験した最も長い待ち時間だったかもしれない」と振り返った。

箱の中にいた時間は1時間半ほとだったが、1年半もの長さに感じたという。

逃亡先のレバノンと日本の間では容疑者引き渡し条約が結ばれていないため、レバノン滞在が認められているが、逃亡を手助けした米国人2人は母国で逮捕されて身柄を引き渡され、日本で裁判にかけられている。

これについて問われると「日本の人質司法の犠牲者全員を気の毒に思う。この悲劇をきっかけに検察の勝率が99・4%と高い日本の司法システムに注目するきっかけになれば」と語った。(ロサンゼルス=千歳香奈子)