東京都が実施する、若年層を対象とした予約なしで受けられる新型コロナウイルスのワクチン接種は28日、初の抽選形式で行われた。

接種会場となった渋谷区立勤労福祉会館前には、抽せん受け付け前から約200人が行列をつくっていた。受け付けを終了する午前10時30分までに2226人が並び、その行列は原宿駅前まで続いた。約1キロにも及んだ行列を想定できず、抽せんから漏れた中国人男性(33)は「事前受け付けがなくて、都内で働く人なら外国人でもOKということだったので来た。まさか、こんなに並んでいるなんて驚きだ」と話し「中国ではワクチン接種はもっと大規模に行っている。日本はちょっと対応が遅いのかも。明日もまた来る」と疲れた表情で話した。

抽せんは、並ぶ際に配布された自分の番号が、無作為で抽選されて当否が決定。インターネット上で正午前に公開された。日本在住の外国人も大勢並んでおり、都担当者は「ツイッターなどで告知をしたが、外国人の方々向けの英語表記すらなかったのは、今後の課題になるかもしれない」と話した。

正午から午後7時30分までの接種時間に“当たった”のは354人。当選倍率は約6・28倍。杉並区からきた女性(27)は「先週、職場でコロナ陽性者が出ました。こんなに身近では初めてだったので、このタイミングで接種できたのはうれしいです」と腕組みをして「でも、自分の携帯で当選情報を検索したら自分の番号があって、ひきました。これで持てる運を使いきってしまいましたね」とマスク越しに苦笑いをした。

IT企業で働く男性(25)は後輩男性(20)と練馬区の社宅から、渋谷でショッピングのついでに来たという。男性は外れ、後輩男性が当たった。後輩男性は「とても気まずい空気が流れました。腕は痛くなくて、このまま副反応もなくコロナを撃退できればいいです」と話した。外れた男性は沖縄県出身で昨夏に東京へ移住し、「後輩の様子を見て、今後のどうするかを決める。練馬区での接種予約は今月は外れたけど、来月以降応募する。この渋谷の抽せんは行列に並ぶのは暑くてもたないから、もう来ません」と話していた。

渋谷区で実施する新型コロナウイルスのワクチン接種の対象年齢は16~39歳、男女は問わない。会場は10月初旬ごろまで運営する方針で、ワクチンは米ファイザー製を使用。都内の在住者と通勤、通学者を対象とする。【寺沢卓】