新型コロナウイルス感染拡大の影響で大打撃を受けた飲食業界で奮闘する元Vリーガーの米村信子さんが23日、テークアウト専門のアイスクリーム店「チュロスとアイス」(大阪市北区)をオープンした。営業時間は午後6時~12時で、「SNS映えする」と大阪府の若者の間で流行している“夜アイス”の業態に挑戦する。

11年に選手を引退。12年にスペイン料理店「Laconcha(ラコンチャ)」を開店した。スペインで修業した本場仕込みのパエリアが人気で、バレーボール仲間らが月に1度は集まる場所に。しかし、新型コロナの影響で状況は一変。苦しい状況が強いられる中、20年5月、医療従事者に弁当を無償提供する「デリバレープロジェクト」を企画した。「人命のために必死となって戦う人たちに、感謝の思いを伝えたい」とチャリティーオークションを実施。元日本女子代表の木村沙織さんなど47人が協力し、150万円余りを集めた。材料費や協力する7店舗への謝礼に当てた。ラコンチャは20年10月から休業している。19年夏から営業している日替わり和食弁当の配達が売り上げの主軸となった。

「アイスを一緒に食べに行きませんか」。8月ごろ、弁当店の女子大学生のアルバイトスタッフらから突然の誘いを受けた。中学校でバレーボールの外部指導を行っている米村さんは、夜遅くなるからと一度断ったが、スタッフは「時間が遅くても大丈夫です」と答えた。午後9時ごろに店に着くと、若者の行列に目を奪われた。「不思議な空間でした」。コロナ禍で酒類を提供せず、営業時間にも縛られない夜アイスに新たな活路を見いだした。

休業中の店を活用し、わずか1カ月でオープンした。店名やロゴのデザイン、内装など女子大学生のスタッフが考案。米村さんは「寝る間を惜しんで準備してくれました」と感謝した。スタッフについて「しっかりと物事を考えられる子が多い。コロナ禍での学生生活は苦しいと思うけど、その中でもいい経験になったんじゃないかな」と振り返った。オープン初日はSNS効果もあり反響が大きかったといい「夜にお店の電気がつけられるのがうれしい。きれいなアイスでほっこりして欲しい」と笑顔。コロナが収束し、料理店の営業を再開した時には、デザートとして提供するつもりだ。【沢田直人】