「西武ホールディングス」(後藤高志社長=72)は28日、都内のホテルで会見を行い、アウトドア業界の最先端企業「R.project(アール・プロジェクト)」(丹埜倫社長=43)と協業して、アウトドアの事業領域を拡大すると発表した。会見で後藤社長は、10月1日から新合弁会社「ステップアウト」を設立することを明らかにした。出資は西武グループが51%、R.project49%。

西武グループは今年5月に発表した中期経営計画の中で、具体的な新規事業を模索していた。そのなかで、国内屈指のリゾート地やスキー場、ゴルフ場といったハードをうまく生かすため、年間1900万人もの利用があり、4000施設以上の掲載があるキャンプ場検索・予約サイト「なっぷ」を運営するR.projectとの協業を提案し、受け入れられた。同社は2006年(平18)、千葉県鋸南町にあった旧千代田区臨海学園を合宿施設「サンセットブリーズ」として再生した後、合宿、キャンプ、バーベキューなど事業を広げ、現在国内44カ所で事業を展開している。

「お互いの強みを生かして、新しい人の流れを作ることができる」と話す後藤社長。グループの私有地を生かしつつ、22年度に私有地第1号キャンプ場を開業させる予定。30年には国内のアウトドア関連市場1兆円、ステップアウトの関連施設の利用者が年間100万人以上、単体での売り上げ20億~30億円を見込んでいる。

西武ホールディングスは前年度、723億円の最終赤字を計上した。昨年末にはJR東日本との包括的な連携協定を発表。今年5月には地方創生に取り組む企業「刀」と組んで、約100億円をかけて西武園ゆうえんちをリニューアルさせている。今回も「地方創生」の一環で、「遊休地をアウトドア事業で活用して、アウトドアの勝ちが再認識されるようにしたい。コロナ禍を奇貨として、脚光を浴びているアウトドアを経営改革の大きな柱としたい」と、後藤社長は張り切る。

また、丹埜社長は「リゾート地の箱根や軽井沢、ゴルフやスキー、大型プールなどのジャンルが一部の人に限られていた楽しみを、多くの国民に開放した観光レジャー業界のパイオニアである西武グループと組んで、数十年後に先進的な取り組みになったと思われるようにしたい」と話していた。