将棋の第92期ヒューリック杯棋聖戦で挑戦者の渡辺明名人(棋王・王将=37)に3連勝して、史上最年少でのタイトル初防衛と九段昇段を果たした藤井聡太棋聖(王位・叡王=19)の就位式が10日、東京・台場「グランドニッコー東京 台場」で行われた。

コロナ禍のため、ファンを招いての飲食を伴うパーティーはなし。関係者、報道陣のみの式となった。

藤井棋聖は15時間前まで第34期竜王戦7番勝負第1局(東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」)を戦い、豊島将之竜王(31)に逆転勝ちしたばかり。一夜明けて、都内移動してきた。

今回の記念扇子には「雲外蒼天(うんがいそうてん)」と揮毫(きごう)した。「強くなることで、盤上において今まで見えていなかった新しい景色が見えてくるのかなと。それを目指していきたいという気持ちを込めました」と説明した。この熟語、最近では女流棋士の里見香奈4冠(29)や、西山朋佳3冠(26)も使っている。

かつて藤井は、「大志」「飛翔」といった上昇志向を文字に託していた。今回はさらなる高みを目指していくという意味もある。謝辞では、「私に初めての防衛戦でしたが、力んでしまわないよう挑戦者として臨むようにしました。前期と同じく渡辺名人との3番勝負はどれもきわどい将棋で、3連勝は望外の結果だったと思います。この経験を生かして来期、よりよい将棋をお見せできるよう精進していきます」と述べた。第一人者として、自分の道を究めようとの思いがある。

今月以降も竜王戦7番勝負に加え、渡辺王将への挑戦権を争う王将戦挑戦者決定リーグもある。「自分としては充実感がある。それを次の対局につなげるという良いサイクルになっている」と、式後の会見で話した。竜王戦では史上最年少4冠がかかるが、「自分としては結果そのものを気にすることはない」と、自然体を強調していた。【赤塚辰浩】