将棋の藤井聡太3冠(王位・叡王・棋聖=19)が史上最年少4冠獲得を目指して豊島将之竜王(31)に挑戦する、第34期竜王戦7番勝負第2局が22、23の両日、京都市の世界遺産・仁和寺で行われ、後手の藤井が豊島を70手で破り、タイトル奪取まであと2勝とした。

第3局は30、31日に福島県いわき市で行われる。過去の竜王戦7番勝負のデータでは、開幕2連勝のタイトル獲得率は77・3%。史上初の「10代4冠」にグッと近づいた。

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藤井が決戦の地となった世界遺産で「横綱相撲」を見せつけた。対局室はふすま絵の美しさが際立つ、登録有形文化財の仁和寺宸殿(しんでん)。藤井の1勝で迎えた第2局は互いに飛車先の歩を交換する相掛かりの戦型になった。序盤から難しく、1手1手に深い読みが必要とされる激戦となり、両者の構想力が問われた。

2日目午後から本格的な戦いが始まり、藤井が攻め、豊島が受ける展開。先手番が主導権を握ることが多いが、藤井はリードを少しずつ広げて勝ちきる「横綱相撲」。豊島に反撃のスキさえ与えず、鮮やかに寄せきった。

終局後、藤井は「最後まで際どいところが多いかとは思っていました」と振り返り、最終盤に「(64手目)後手5七桂成から攻め込んでいって、最後こちらの玉が詰まない形になった」と勝利を確信した。

大きな白星だった。デビューから6連敗した“藤井キラー”の豊島との対戦成績は10勝9敗となり、勝ち越しに成功した。難敵を相手に構想力で上回り、苦手意識も完全に払拭(ふっしょく)した。

竜王奪取、史上最年少4冠へ心強いデータがある。過去33回、行われた竜王戦7番勝負では第1、第2局を連勝した例は22回あり、タイトルを奪取、防衛したケースは17回。開幕連勝のタイトル獲得率は77・3%。過去の例を見ても、開幕連勝はシリーズの流れを大きく引き寄せている。

開幕連勝にも気を緩めない。「第3局がすぐにあるので、スコアを気にせず、いい状態で臨みたい」。弱冠19歳にしてすでに王者の風格をまとう。最年少4冠は羽生善治九段が持つ22歳9カ月。名人と並ぶ将棋界最高峰のタイトル、竜王を獲得すれば、最年少記録を大幅に更新し、史上初の「10代4冠」が誕生する。【松浦隆司】