電気自動車大手テスラの共同創設者で、宇宙開発企業スペースXのCEOでもある米実業家イーロン・マスク氏(50)が設立した脳インプラント企業「ニューラルリンク」が、サルの脳にチップを埋め込む実験は動物虐待だとして告発された。ニューラルリンクを巡っては、2017年から20年にかけて実験に用いたサル23匹のうち15匹が死んだと先週、米ニューヨーク・ポスト紙が報じていた。

米CBSなどによると、動物愛護団体が実験に協力したカリフォルニア大学デービス校に対し、生きたサルを研究に利用するのは「動物虐待」だとして米農務省に法的な異議申し立てを行ったという。ニューラルリンクは昨春、脳にチップを埋め込まれたオスの9歳のサルが思考だけでコンピューターゲームをする映像を公開し、実験に成功したことを発表していた。

報道によると、頭蓋骨に穴を開けて電極を埋め込む手術を受けたサルたちは、衰弱して健康への影響に苦しんでいたという。中には皮膚の感染症を発症して安楽死させられたサルもいた他、ストレスからか自傷行為で手足の指の一部が欠損したサルもいたという。ニューラルリンクは感染症にかかったサルを安楽死させたことは認めているが、動物虐待の疑惑は否定している。

同社は将来的に、重度の脊髄損傷を患う人が移植したチップによって思考だけでコンピューターを操作することが可能になる技術の開発を目指しており、ブログで「新しい医療機器や治療法はすべて、人間での倫理的な試験が可能になる前に動物実験を行う必要がある」と説明。一方で、米農務省を含むすべての規制に従っており、実験に使用する動物には可能な限り最善のケアを提供すると述べている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)