16日午後11時36分ごろに発生した、福島県沖が震源で最大震度6強を観測した地震から一夜明けた17日、各地の甚大な被害が明らかとなった。福島、宮城の両県で計3人が死亡し、ケガ人は12県で160人超。宮城で死亡した1人についても、警察などが地震との関連を調べている。鉄道は運転見合わせ、高速道路でも通行止めが相次いだ。最大の震度6強の福島県相馬市では建造物の倒壊など被害が続出。市民は「3・11以上の揺れを感じた」と、深夜の恐怖を振り返った。

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国の重要無形民俗文化財に指定されている「相馬野馬追」の出陣式が行われる相馬中村神社(福島県相馬市)が崩壊した。宮司の森拓樹さんは「3・11の地震とは比べものにならないほど揺れた。本当にすごかったです」。片付け作業をしながら「もう、どうしたら良いのか…」と大きなため息をつき、「野馬追も今年こそは、通常通りにと思っていたのに(復旧が)間に合うのかどうかも分からない」と悲痛な声をあげた。

約1年前の2月13日にも、震度6強の地震に襲われ、被害を受けたばかりだ。1928年(昭3)建立の大鳥居が損傷し、参道の石灯籠も崩壊。7月の野馬追に間に合わせるため、関係者らがクラウドファンディングで寄付金を募って復旧させた。昨年12月に福島市内の支援者からステンレス製の大鳥居(高さ7・4メートル)を寄贈されてから約3カ月、「つかの間だった…」。今回は第2の鳥居、第3の鳥居が崩落。造り変えた24個ある参道の石灯籠も再び全滅。本殿などは無事だったが、7月23日開幕の野馬追出陣式開催に危機感をつのらせた。

相馬市内の建物も、屋根瓦の落下や、壁や塀の崩壊、窓ガラスが割れるなど、被害が多発した。道路も亀裂や隆起が続出し、通行止めにせざるを得ない危険地域も多数。大通りにかかる歩道橋が崩れ落ちた光景に、自宅室内の清掃作業を行っていた50代男性は「もし、昼間に同じ地震が起きていたら、もっともっと犠牲者が出ていたと思う」。ドラッグストアに買い物に来た20代女性も「食事どきだったら火事もあっただろうし、幼稚園や小学校に子どもが行っていたらと思うと、震えが止まりません」と男児の手をギュッと握った。消防団として尽力する40代男性は「10年に1回こんな地震が来るなんて、本当にやってられないっすよ」。【鎌田直秀】

○…相馬市では断水が続き、計7カ所で自衛隊による給水が行われた。市から市民にメールやLINEで該当地域の時間や場所を通達。午後2時半予定だった八幡公民館では、45分遅れで給水車が到着すると拍手も起きた。1世帯10リットル限定で、クラッカーなども配布。1人暮らしの80代女性は「ようやく水がもらえて良かった。家はもうグチャグチャで11年前の時よりもひどい。窓もとれちゃって風が入るので、明日は雨か雪みたいだから不安」。ポリタンクを両手で抱えて帰路についた。