ジャーナリスト伊藤詩織さん(33)が、誹謗(ひぼう)中傷のツイートに対して「いいね」を押され名誉感情を侵害されたとして、自民党の杉田水脈衆院議員(54)に220万円の損害賠償などを請求した訴訟の判決で25日、東京地裁(武藤貴明裁判長)は伊藤さん側の請求を棄却した。伊藤さんは同日、都内で会見を開き、控訴する意向を明らかにした。佃克彦弁護士は会見の中で、杉田氏の尋問の申請をしたものの裁判所が採用せず、立証の機会を奪われたとして「アンフェアだろうと」と疑問を呈した。

東京地裁は判決の中で、ツイッターで「いいね」を押す行為は好意的、肯定的な感情を示すものとして用いられることが多いとした上で社会通念上、許される限度を超える違法な行為と評価できないとした。その判断に対し、佃弁護士は「杉田氏が『いいね』を押しているツイートは、伊藤さんに対する悪口。それまでの言論活動も一貫して、伊藤さんに対する攻撃になっている中での『いいね』だから、どの部分に反応しているかは明らか」と指摘。「それを判断するのが裁判所の仕事なんじゃないか? 判断して、お給料をもらっているんだから、困る」と首を傾げた。

さらに「判決は、杉田氏の『いいね』について好意的、肯定的な感情の対象、程度をうかがい知ることが出来ない、加害の意図を持って行われたと認めるべき事情も見当たらない。証拠として認められないじゃないかということで、請求を棄却した」と指摘。その上で「我々が杉田氏の尋問の申請をしたら、被告はそれは必要がないと頑強に反対して、裁判所は尋問を採用しなかった。我々の立証の機会を奪って、杉田氏がどういうつもりでやったか、分からないじゃないかと言われても、我々は何をすれば良いか? という話」と疑問を呈した。

さらに「この論理の構造であれば、裁判所は我々の尋問の申請を採用しなければいけなかったはず。立証しようと思ったら、立証の機会が得られたことであるにも関わらず立証がないという形で棄却したのは、裁判所の訴訟の仕切り、理屈づけはおかしい。ああいう、訴訟進行を取った上での、この判決は、それは、ないだろう。非常にアンフェアだと思う」と憤った。

伊藤さんは「誹謗(ひぼう)中傷をしている人が周りにいたら、自分もしても良いのかもしれないと思ってしまう風潮があるんじゃないか。それが、すごく怖い」と世の中の風潮に懸念を示した。その上で「発信力があり、法律を変えていく立場の一国会議員がしたということは、あるべき姿ではない。意思表示をするのが、どういう結果になるか、しっかり考えて欲しい」と杉田氏にも疑問を呈した。そして「まだまだ、スタートなのかなと思っています」と語った。