世界最高齢でのヨットによる単独無寄港太平洋横断に挑む海洋冒険家の堀江謙一さん(83)が日本時間27日未明(現地時間26日)、米サンフランシスコから約8500キロ離れた兵庫県西宮市に向け、約2カ月半の航海に出発した。到着は6月上旬の予定。

まだ海外旅行が自由にできなかった1962年、23歳の青年が世界で初めてヨットによる単独無寄港の太平洋横断を達成してから60年。前回とは逆向きに進む83歳の大冒険が始まった。

出航場所となったザ・サンフランシスコヨットクラブでは出航式が行われ、堀江さんは「私は、60年前にこの美しいサンフランシスコにやってきたわけですが、またこの地から日本に出発できるとは想像もしていませんでした」としみじみと語り、「健康にも恵まれ、このような機会を得ることができ、ワクワクしている。60年前は最年少で今回は最年長。ワンセットでできれば」と意気込んだ。

報道陣から「今のお気持ちは」との質問には「大変失礼ですが、(質疑応答が)早く終わって出発したい」と答え、見送る人々の笑いを誘った。

今回、60年前と同じ大きさの小型ヨット「サントリーマーメイド3号」(全長約6メートル、重量約1トン)が“相棒”だ。「何と言ってもゴールに向かってヨットが全速力で進んでいる快感が一番」と話し、温暖なハワイ周辺などの海域を経て「Tシャツ、半パンでゴールしたい」と力強く宣言。現地時間の26日午前9時45分、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジを“相棒”とともに通過した。世界最高齢での偉業達成に挑む。

◆堀江謙一(ほりえ・けんいち)1938年(昭13)9月8日、大阪市生まれ。兵庫県芦屋市在住。大阪・関大一高卒。高校時代にヨット部に入部してヨットに出会う。62年、小型ヨット「マーメイド号」で太平洋単独横断に成功。その後も数々の海洋冒険を重ねる。著書に「太平洋ひとりぼっち」(ベネッセコーポレーション)など。

◆堀江謙一さんの主な冒険航海

▼1962年 小型ヨット「マーメイド号」に乗り、西宮港から米サンフランシスコまで、太平洋の単独無寄港横断に世界で初めて成功。その記録をまとめた航海記「太平洋ひとりぼっち」はベストセラーになり、故石原裕次郎さん主演で映画化

▼73~74年 単独無寄港世界1周(ホーン岬西周り275日)

▼78~82年 縦回り世界1周

▼85年 ソーラーパワーボートでハワイ-父島の間の単独無寄港太平洋横断航海

▼92~93年 足こぎボートでハワイ-沖縄

▼96年 ソーラーパワーボート「モルツマーメイド号」でエクアドル-東京

▼04~05年 ヨット「サントリーマーメイド号」で単独無寄港世界一周(東回り)

▼08年 波浪推進船「サントリーマーメイド2号」でハワイ-紀伊水道

○…60年前の航海と今回とは大きく異なる点がある。ヨットに積む衛星利用測位システム(GPS)などの機器を提供した船舶用電子機器メーカー「古野電気」(西宮市)のホームページに特設サイト(https://www.furuno.com/special/jp/horie-challenge/)を開設。堀江さんのヨットの現在位置を1時間ごとに更新し、ゴールまでの距離が確認できる。堀江さんのホームページ(https://www.suntorymermaid.com/)では航海日記が随時更新される。大冒険をほぼリアルタイムで確認できる。